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「女性の活用を考える」その2 活用のための具体策

企業は女性活用の重要性を認識し、多くの企業で活用に向けた動きが強まっています。「女性の活用を考える」その1では、「現状と課題」について述べましたので、今回は活用のための具体策について書くことにします。

今後、多くの企業は、政府の掲げた女性管理職の増加や経営幹部への登用等も含めた女性全体の活用を念頭に置いて、自社に合った方法と具体策で会社全体の活力ある仕組みを作り、企業が持続的に成長するための人的活用策を考え、実行していくことになるでしょう。

具体的な対応についてはもちろん業種や企業の置かれている状況、各企業の経営戦略等を考慮して人材の確保・育成・配置・活用・処遇を考えていくことになります。企業の対応の仕方はさまざまでしょうが、経営環境変化や時流を考えますとスピード感を持って早めの対応が望まれます。

女性の活用は国、自治体、企業、従業員、わが国の人口動態等が関わった極めて大きく、大事な問題です。関係者が目先の自分達の利害得失にとらわれることなく、わが国の将来を見据えた多面にわたる具体策を打ち出す必要があります。まずはこの点についての認識を共有することが重要です。

具体策ですが、まずは女性の活用上問題になっている政策問題から取り上げることにします。国は経済の持続的成長を目指し、日本全体の経済・雇用環境をよくすることが大切です。経済成長は国民、企業、従業員が元気の出る源です。今まではデフレ経済が続いていたこともあって結婚し、子供を産み、育てるということが難しいと思えるような状況であったと言ってよいでしょう。景気に多少明るさが感じられるようになり、子供の出産・育児につても少し環境が良くなるとの期待もあります。これからは、雇用確保と賃金の格差是正等を実現し、結婚して2人で一生懸命働けば、子供を2~3人産み、生活できる環境を国全体で作っていくことが大切です。結婚・出産は個人の生き方・考え方の問題という人もいます。基本的にはそうでしょうが、今のままですと、人口は大幅に落ち込むことになります。政府の有識者委員会は今年の5月13日「人口減少の解決は急務だ」とする中間報告書を発表しました。現在の我が国の人口は約1億2800万人ですが50年後には8000万人台に大幅に落ちむと予想されています。それを1億人で維持するよう目標設定するよう求めています。それを実現するためには、「今まで高齢者対策が中心だった政府予算も大胆に子供に移すべきだ」と指摘。出産や子育て支援の財政支出を倍増するよう促しています。その理由として「現在進む人口減少を放置すると国内市場が縮小し、投資先としての魅力が低下し、経済規模の縮小がさらなる縮小を招く負の連鎖に陥る」と警鐘を鳴らしています。

人口減少への対策は20年位前からそれへの対策が必要との指摘がありました。一部の著名者から“人口減少は怖くない”との話を聞き、違和感があったことを思い出します。

現在、未婚の男女が増加していますが、その人達の中にも結婚・出産を希望している人は多くいます。先進国にはいろいろな施策で出生率が高まり、育児環境を整備して女性の社会進出・活用を支援している国もあります。

わが国では、最近、地方に働く職場が減少し、都会に出て働き、出産後も続けて働きたいと思っても幼児保育園に入園できないと言った、まさに今問題になっている待機幼児問題があります。保育園に入園できれば、延長保育で午後8時30分位まで子供を預かってくれますが、問題は小学校の学童保育です。公立小学校の授業が終わるのが午後3時頃です。それ以降、そして春休み、夏休み、冬休みはどうするのでしょうか。“小学校の1年の壁”という言葉があります。これは学校の学童保育の対象者数が限定されているために入れず、民間の高い学童保育にも定員があって入れないのが現状です。運よく学童保育に入れても、預かってもらえる時間は午後6時~7時です。都心に勤めている人は間に合わない場合も出てきます。対象者は小学3年生までということです。4年生からカギッ子生活になります。痛ましい事件もあり、親が責任を持って対応せざるを得ず、長年勤務して蓄えた知識や経験を活かせず会社を辞めざるを得ないということになります。子供の安全性や女性のキャリアアップを推進する意味から見ても小学校6年生までの学童保育が必要と思われます。もう一つの対応策として、現在3歳までの短時間勤務制度を小学校6年生まで伸ばして活用せざるを得ない人に活用してもらう方法もあります。これは働くうえでの基礎的な環境整備です。組織の大小にかかわらず同じ条件で法的に制度化するということになります。それをせずに女性の活用と言っても実現は難しいと言ってよいでしょう。

短時間勤務制度は導入することで企業は優秀な人材をやめさせることはなく、キャリアアップにつなげることができますし、子供の健全な育成にも資することになります。

従来型の制度の継続では、女性がキャリアを活かしたくとも活かすことはできません。自分のキャリアを活かし続けられる人は生涯独身覚悟で頑張るか、親と同居しているか、安心してベビーシッターに預けられるお金持ちくらいしかいないことになります。これでは今までと変わりませんし、女性の知識・経験・モチベーションを高め有効活用をめざそうという考え方と大きなずれを感じる人は少なくないように思います。

女性のキャリアを継続させやすくするためにも国、自治体は幼児と学童保育については、小学6年生までの短時間勤務制度を早急に拡充する必要があります。これは多くの働く親の希望でもあります。また法律は、作って終わりではなく、必要性が強いから作られるものです。必要な人に活用してもらってはじめて役に立つわけですから、施行後の行政の普及・指導・監督が重要になります。

企業は、女性の活用について何をすべきでしょうか。

①最近、女性活用の必要性については企業のトップ層も真剣に考え始めています。これを推進するためには、トップが社内外に女性活用の重要性を明確に発信し、関連部門に具体策をつくるよう指示し、スピード感を持って制度化することです。

②男性向きの仕事、女性向きの仕事という考え方が以前はかなりあったように思いますが、最近意識の多様化を反映してか、そのような区分が薄れているように思います。就職に当たっても男性向きと言われている仕事に女性が応募する場合も以前に比べて多くなっていますし、その反対もあります。採用に当たっては能力、意欲、健康、人格、将来性等を公正に評価し、優秀な人材を確保し、活用することが大切です。

③会社の人事制度は各社各様ですが、例えば、総合職、一般職ということで採用した場合にはそれぞれの職層に応じて教育・研修の機会を公正に与えるとともに、配置転換、異動等も各人の適性・育成方針の下で行うことが大切です。またこのような人事制度を採用した場合でも、一般職と総合職間で本人と会社との合意の下で転換できる制度をつくることが処遇の柔軟性や能力開発等からみて好ましく積極的に実施すべきです。

④上位の職位に上がるためにはいろいろな経験が必要です。難しい仕事や他部門が絡んだプロジェクト、社外研修等に女性も積極的に参加させるなどチャンスやチャレンジの機会等を公平に与えることも必要です。

⑤女性活用の動きで一番頭を悩ましているのが直接仕事にかかわっている部課長ではないかと言われていますが、特別気を使う必要もなく、仕事は男女を問わず活発に意見交換ができるような職場をつくり、能力・成果・意欲等に応じて公正に対応するように心がけるということになります。過剰に女性を意識して難しくない仕事を与えることは、本人の意欲・能力を削ぐことになりますし、企業に損失を与えることになります。能力・意欲を高めそれに見合う仕事を与えることが大切です。

⑥賃金、昇進、昇格、降職、降格は人事考課や試験、面接等を実施し、その結果を踏まえて公正に処遇することになります。そのためには処遇の基準や担当する職務、役割を明確にした制度の下で本人参画型の考課システムを導入し、考課のルールに従がって納得性のある評価をすることが重要です。

⑦女性には出産・育児という大きな役目があります。育児はもちろん男性もかかわることですが、出産後1~2年間は女性の役目が大きいことは事実でしょう。その間は多くの女性はどうしても独身の時のように時間を気にせずバリバリ働くことが難しくなります。その間の能力をどのように維持するのかという問題が本人、会社ともあります。処遇の問題も絡んできます。企業によって対応の仕方が異なりますが、育児休業期間中は会社情報を提供する、インターネットで一部の仕事を与えるなどもあります。人事・賃金等の処遇については、不利益変更にならないようあらかじめ育児休業期間中や短時間勤務の際の処遇規定を整備しておく必要があります。

⑧これからの労働時間管理は、働く時間の長さではなく、その間に何をしたかの質が問われる時代になっていますので、時間外労働の抑制と労働時間の弾力化で時間を有効に活用することも大事です。上記の他にも女性が働きやすく、キャリアを持続的に形成していく方法はいろいろあります。企業は、女性との意見交換を通して仕事へのチャレンジが可能となるような職場環境を整備することで企業業績にも大いに貢献してもらうことができるようにすべきでしょう。

【MMC総研代表 小柳勝二郎】