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わが国企業の経営課題と対策について―その7、マーケテイングの強化は重要な経営戦略
MMC総研 代表 小柳勝二郎
わが国の企業経営において販売とか、営業という言葉はよく聞きますが、マ-ケテイングという言葉は大手企業では使っているところもありますが、一般的には、あまり使われていないように思います。大手企業の組織にはマーケテイング部がありますし、これから製品を開発し、市場に出すにはマーケテイングをしっかりすることが大切だといった会話がよく行われています。
欧米では以前から使われていますので、その言葉の意味合いは日本の企業よりよく理解されているように思います。
企業経営におけるマーケテイングの位置づけはイノベーションによる「顧客の創出」と並んで重要視されています。企業は顧客が欲しいと思う製品を作らないと買ってもらいないし、多く買ってもらえるようするためにはそれを可能にする仕組みを作らなければなりません。
外部から買った部材、人間の知恵、機械・設備の活用により製品がつくられます。それが売れなければ付加価値や利益は出ませんし、売れるまでの期間が長く、売れる量が少なければ企業経営は成り立たなくなります。物は売れて初めて付加価値や利益が出ることを考えますとマーケテイングは企業経営上大変重要ということになります。
マーケテイングは狭・広義の捉え方がありますが、狭義では製・商品、サービスの宣伝・販売ということになりますが、広義では、製・商品、サービスの企画・開発、市場調査、宣伝、販売促進、顧客の情報管理などが含まれています。今では広義の捉え方が一般的です。
マーケテイングの狙いを分かり易く言うと「顧客のニーズに合った製・商品、サービスを世の中に提供し、ひとりでに売れてしまう“仕組みづくり”の業務」とでも言ってよいでしょう。したがって、企業にマーケテイング能力があるか否かは重要で、企業の盛衰・存亡にかかわってきます。
日本の多くの企業組織に営業部はあります。営業部の業務内容は企業によって異なりますので一概に言えませんが、マーケテイング業務の一部を営業部で行っている企業、営業企画部で行っている企業、営業部とマーケテイング部をもっている企業など様々です。
マーケテイングと営業の違いはどこにあるのかということになりますが、業種によっても異なりますし、営業の担当者によっても営業の仕方が異なりますので一概に言いませんが、一般的には、営業は英語でセーリングというように「顧客に対して製・商品、サービスをいかに売るかという、販売活動に重点が置かれている」と受け止められています。その過程で営業員は資料等を活用して説明し、買ってもらう努力をします。マーケテイングは既述のように市場調査から始まって多くの顧客に売れるための仕組みづくりをするということになりますので、営業はマーケテイングの一部ということになります。
企業の営業活動は「御用聞き型営業」や「押し売り的営業」から「顧客ニーズ掘り起し型営業」や「ソリューション型営業」が求められています。営業員もそのような流れの中でどのようにしたら営業活動が成果に結びつくかを経験・知識をもとにいろいろ考えて対応していると思います。
そのような努力の積み重ねも大変重要ですが、それは各営業員の“点”の力が中心になっています。これからは、会社全体としていろんな業務と連携してどのような仕組みの中で多く販売していくかという“面”としての力が発揮できるよう進化させていくことが業務の発展にとって大切です。
マーケテイング戦略の権威であるフィリップコトラーは戦略対応として次の3点を挙げています。1つはセグメンテーション(segmentation)をどのようにするかという点です。これは市場を類別し、それぞれの特性に合った製・商品をどのように販売するかという戦略です。2つは、どこの市場をターゲテング(targetting)にして資源を集中するかの選択の問題です。3つは、ポジショニング(positioning)の問題です。つまり競合他社の製・商品に対してどのような位置づけを考えるかということですが、具体的には、企業独自の製・商品の価値の差別化を顧客に明確に示すということです。この三つの英語の頭文字をとって「STPマーケテイング」といわれています。
マーケテイング戦略はいろいろありますが、マーケティングを効果的に行うための4P戦略という考え方もあります。4Pとは製品(Product)、価格(Price)流通(Place)、販売促進(Promotion)の頭文字をとったものですが、マーケテイングを行うためには、この4要素の整合性や相互関連の効果を高めることが大切としています。製品は、機能、品質、デザインのみでなく、ブランド、アフターサービス等をトータルとして考えます。価格をどのように決めるかはマーケテイングでは大変重要です。
基本的には価格と同等かそれ以上の価値を顧客が感じることができれば顧客満足度は高まりますが、その逆であると顧客の不満感は高まります。流通は時間的に早く届くということや流通経路が効率的で約束通り顧客に的確に届くことが求められます。販売促進は販売を促進する広告・宣伝、営業活動等です。この4要素の効果的活用を一般的にはマーケテング・ミックスと言っています。
競争が激しくなる今日、我が国企業が競争力や収益力を高めるためにはマーケテイングの強化は、重要な経営戦略であるということを再認識して経営をしていく必要があります。