労働あ・ら・かると
カラオケマナーで新入社員との人間関係をつくろう
社会保険労務士 川越 雄一
「もっとサラッと歌えばいいのに」とのひと言に「むっ」とすることもあるのではないでしょうか。ものは言いようで「味があっていいね」と言ってもらえればどれほど気持ちが良いことか。
職場でも同じで、4月に入った新入社員に、ちょっとしたことで「むっ」とされゴタゴタが起きたりします。それを防ぐには人間関係づくりが不可欠ですが、その際にカラオケマナーが大いに役立ちます。
1.思わず「むっ」とする
一杯入るとマイクを握りたくなることも多いのですが、マナー違反は意外に多く、思わず「むっ」とすることもあるのではないでしょうか。
- 人の歌を聴かずに曲さがし
カラオケにおいて、1曲目は手を挙げにくいものですが、徐々に盛り上がり、曲さがしが忙しく人の歌どころではなくなります。もちろん、付き合い程度に拍手はするものの、人の歌など上の空です。とりあえず聴いているようなふりはするものの、心ここにあらずで、タッチパネルで自分の曲さがしに夢中です。
- 悪いところを指摘する
「あそこはもう少しこぶしがないと」「声の出がイマイチ」。ろくすっぽ聴いてもいないのに批評が厳しかったりします。べつにプロ歌手を目指しているわけもないわけですから、そこまで言われる筋合いはありません。それに、自分でも少しは気付いているわけで、さらに追い打ちをかけるように言われるからカチンとくるのです。
- 機械の採点で評価され
70点、88点と、歌うたびに点数が表示され、それだけでうまい下手を評価されるのはどうなのでしょうか。そもそも歌というのは芸術ですから、機械なんぞに点数をつけられる筋合いはありません。機械の採点機能に合わせて淡々と歌えば良いらしいのですが、そんなことで高得点を出した歌に、どれだけの魅力があるのでしょうか。
2.カラオケにおける3つのマナー
カラオケで歌い手を「むっ」とさせないためには、それなりのマナーがあります。聴いてやる、拍手して褒める、そして次の曲をすすめる、の3つです。
- まずはじっくりと聴いてやる
たしかに、カラオケで人の歌をじっくり聴くというのは、よほどうまい人の歌でないかぎり苦痛に近いものがあります。しかし、そこはお互い様であり、自分の歌を聴いてもらうには、人の歌もキチンと聴いてやることが必要です。キチンと聴いてくれる人には好感を持つものです。これは歌に限ったことではありません。
- 拍手して褒める
半分はお世辞だと分かっていても、歌い手の顔を見ながらうなずいたり、拍手をもらえば嬉しいものです。「これ練習曲ね」と言いながらも、普通は得意なものから歌うのではないでしょうか。ですから、どこかに良いところがあるはずです。「だいぶ授業料払ってますね」「仕事してないんじゃないの」という褒め言葉に内心「にんまり」。
- さらに次の歌をすすめる
「よかったですよ。ぜひ、もう一曲どうぞ。」もう1曲くらい歌っても良いかな、と考えている場合、このひと言はありがたいものです。考えていても自分では言い出せないわけで、さらに次の歌をすすめられるからその気になるのです。「いやー、もういいですよ」と言いながら、タッチパネルについ手が伸びます。
3.カラオケマナーを活かす人間関係づくり
必要以上に従業員のご機嫌をとってまで、人間関係をつくる必要はあません。しかし、ちょっとした気配りで人間関係が良好に保てるならば、経営上も損な話ではないはずです。
- 話を聴く
子供もそうですが、まずは相手の話をじっくりと聴いてやります。聴いてくれる人がいるから話す気になります。大事だといわれる“報告・連絡・相談”においても、基本は従業員の話をじっくりと聴いてやることから始まります。そして、話を聴いたうえで、会社の指示や要望などを伝えれば、従業員の耳にもすーっと入っていきます。
- 共感する
いくら話を聴くといっても、従業員の顔も見ず中途半端に「ふんふん」では意味がありません。顔を見ながら「へぇー、そうだったのか」「それは大変だったね」「辛かったね」「よかったね」などと話に共感します。共感してもらうから「この人、私のことを分かってくれている」ということで人間関係は急速に深まります。
- 次の段階の仕事をやらせる
人から頼りにされると悪い気はしません。仕事においても、新たに仕事を頼まれるということは、これまでの実績を評価され、信頼感があるからできることです。「今度の現場、一人で最初からやってみるか」のひと言で、若手の従業員をその気にさせることができます。
人間関係づくりというと、何やら小難しいことを考えがちですが、そのヒントは意外と身近なところにあります。まずはじっくりと聴いてやり、共感して褒める、そして次の歌をすすめる、というカラオケマナーを活かせば、新入社員ともそこそこの人間関係はできるものです。
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、自粛を求められているカラオケですが、一日も早く終息し、十八番(おはこ)を一曲うなりたいものです。