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労働あ・ら・かると

パートさんに定時勤務で納得感を持たせよう

社会保険労務士 川越雄一

 

中小企業でも2021年4月から、「同一労働同一賃金」が適用されています。正社員とパートタイマーなどの不合理な待遇差を禁止するものです。しかし、パートさんの多くは扶養家族の範囲内で働いている人であり年収制限があります。ですから、残業なく定時でキチンと帰ることができる環境を整えておけば、多少、同一賃金ではなくてもパートさんの納得感はあるのではないでしょうか。

 

1.パートさんの労働時間は

法律で、パートさんの労働時間が具体的に何時間と決まっているわけではありませんが、各種制度の適用において週30時間が一つの基準です。また、時間外労働、休日、休憩は正社員と同じです。

  • 週30時間が各制度の適用基準

①年次有給休暇における、パートさん向けの比例付与制度を適用できる一つの要件が週30時間未満です。

②社会保険の加入対象は、原則として1カ月の勤務日数と週の労働時間が正社員の4分の3以上ですから週30時間以上になります。

③会社の定期健康診断実施義務は正社員の4分の3以上の勤務ですから週30時間以上になります。

  • 休日・休憩は

休日は最低でも1週1日もしくは4週4日が必要です。これを法定休日といいますが、仮に1日1時間勤務のパートさんにも適用されます。また、正社員と同じように休憩時間は必要です。ただし、6時間までの労働であれば休憩時間は不要です。6時間を超えて8時間ちょうどまでなら45分、そして8時間を超えると1時間の休憩を与えることが必要です。

  • 残業(時間外労働)をさせることは可能だが

パートさんにも、雇用契約書で取り決めをしておけば残業をさせることは可能です。しかし、多くのパートさんは、「定時に帰りたい」「休みたいときに休める」「過重な責任を負わなくて良い」といった働き方ができるから、正社員との処遇格差も甘受してパート勤務をしているわけです。ですから、残業や休日勤務は想定しておらず定時勤務が原則なのです。

 

2.定時勤務をさせる3つの工夫

定時勤務が原則のパートさんですが、ついついズルズルと勤務時間が延びてしまいやすいものです。それを防ぐには意識して定時勤務をさせる工夫が必要です。

  • 定時勤務を「見える化」する

終業時刻になっても、周りの正社員が黙々と仕事をしていれば「お先に失礼します」と帰りにくい雰囲気が漂います。ですから、パートさんの始業・終業時刻、休憩時間、休日を職場内にアナウンスしておくとともに、紙に書いて張り出すなどして、他の従業員に周知します。このようにしておくことにより、パートさんも堂々と定時に帰ることができます。

  • 納期を指定して仕事を頼む

頼まれた仕事を、いつまでに仕上げればいいのかが分からないと「えっ、まだなの? これ急ぐから今日中にね」となり残業が発生しかねません。ですから、仕事を頼む際には、仕上げてほしい納期を指定しておくと、パートさんも仕事の優先順位が明確になり、先が見えるので仕事の進め方を工夫しやすくなります。結果として定時勤務がしやすくなります。

  • 終業時刻を「聞こえる化」する

どこの職場にも時計はありますから、見れば定時になったことは分かります。しかし、時計をしょっちゅう見ているわけではありませから、終業時刻やその5分前にチャイムを鳴らすなど時間を「聞こえる化」します。耳は常時聞こえる状態ですから、職場全体に終業時刻が分かります。分かりますから、パートさん自身も帰りやすい雰囲気になります。

 

3.定時勤務がもたらす効果

定時勤務を徹底させることにより、パートさんはパート勤務に納得感が持て、家庭との両立が容易となり家族に気兼ねなく働けるので定着しやすくなります。また、定時勤務は求人をする場合にも有効です。

  • 「だからパートなんだ」という納得感がある

「同一労働同一賃金」は、基本的にパートさんが自分の仕事と処遇のバランスに不満を持った場合に問題となります。それを防ぐには、パートさんに「だからパートなんだ」と納得感のある働き方をしてもらうことが必要です。そのためには過重な責任を負うことなく、定時で帰ることができるというのは大きなポイントなのです。

  • 家族に気兼ねなく働ける

定時勤務は、家庭との両立が容易となり、家族に気兼ねなく働けるので働き続けやすくなります。逆に、残業が多くて家庭の事がおろそかになると困るのです。真面目な人ほど、家庭のことと仕事、両方とも完璧にこなそうとしますからなおさらです。もし残業が多くなれば、それこそ家族から「そんな残業が多いパートは辞めてしまったら」となりやすいのです。

  • 求人がしやすくなる

「残業は基本的にありませんから定時に帰ることができます!」というのは、パートの仕事を探している人には魅力があります。もちろん、実態としても定時勤務であることは言うまでもありません。パートさんの求人が難しい昨今、これだけでは他社との差別化にはならないでしょうが一つのポイントにはなります。こうして求人がしやすくなれば、採用できる確率も高まり、今いるパートさんの負担が軽くなり、定着が良くなる好循環となります。