労働あ・ら・かると
オンラインハイブリット
就職・採用アナリスト 斎藤 幸江先生
- これからの面接は?
- オンラインとの併用が進む
22年卒採用では78.4%の企業が導入したというオンライン面接。小規模企業での利用が進み、従業員規模300人未満の企業では21年卒比較で、12.4%増えて62.1%となった(リクルート 就職みらい研究所 就職白書 2022)。
オンラインは、時間やコストなどの節約のほか、今までになかった層からの応募をメリットに挙げる企業が多い。地方から大都市圏企業への応募だけではなく、都市部や隣県から地方企業へといった動きもみられる。
23年卒に関しても、一次、二次など初期選考はオンラインというところが多く、しかも、地方自治体の職員採用でも追随が見られる。今春卒では、昨年比、志望者が増加したといわれている地方公務員。幅広い応募層の拡大への期待以外に、増加する受験者の選考の効率化といったねらいもあるのだろう。
- 学生の期待、反応は?
インターンシップの準備を進めている24卒の現3年生に、「面接するなら、対面? それともオンライン?」と尋ねた。54名中32名が、対面がいいと回答した。
理由は、「通信トラブルがあったらどうしようと不安が先立ち、集中できない気がする」、「会社を実際に見る、面接官以外の社員に接するといった機会を持てるので、より応募先のことを理解できる」、「入社したら業務は対面でスタートすると思うので、それに近い形で面接してほしい」、「今までオンラインで授業を受けてきたが、対面よりも集中が持続しにくいと気づいた。面接でも、より集中できる対面がいい」、「緊張感がなくなりそうでオンラインは、怖い」、「態度や身だしなみ、手足の動きなどまでしっかり見て判断してほしい」などが挙がった。
かたや「オンライン支持派」は17名。意外に多かったのが、「カンペが使える」。メモやカンペは必須というより、安心材料として用意したいようだ。このほかにも「就活生が面接会場に出向いて面接を受けるのは、言うなればアウェーで試合をするのと同じようなもの。少なくとも自分に味方してくれるものがない状況で自分を売り込むことのプレッシャーはとても大きい。ある程度自分のフィールドである自宅などで受けるほうがパフォーマンスは落ちない」など、緊張せずリラックスできる点が評価されている。時間や労力の効率化への期待よりも多かった。
- オンラインでは共感は困難
果たしてオンラインで人物像はどこまで把握できるのか。これについては、東北大学華麗医学研究所の川島隆太教授の興味深い記事がある。(実験が明らかにした「オンラインの会話では共感が起きない」 原因の一つは「視線のズレ」か 「週刊新潮」2022年4月28日号 (デイリー新潮 https://www.dailyshincho.jp/article/2022/05010556/?all=1))
オンラインと対面では、「コミュニケーションの質」がどう違うのかを調べるために、実証実験を行った。5人で構成するグループを5組設けて、オンライン、対面それぞれで全員が盛り上がれるテーマで自由に会話を楽しんでもらい、その間の脳の働きを解析した。
その結果、他人との共感を実感すると活動する脳の部分が、対面では複数の人で同期し、オンラインではそういった動きが見られなかったという。
川島氏は、「対面会話時はお互いに共感していたのに比べて、オンライン会話時は共感できていなかったわけです。簡単に言うと、心と心がつながらなかったと言えるでしょう。」と結論づけている。さらにその理由を、「カメラを見ると、相手の目は見られない。つまり視線は合わない。ゆえに脳は同期しない。また、オンラインコミュニケーションの『遅延』も、脳の同期が生まれない大きな原因ではないか」と述べている。
オンラインでは、人と人との距離が縮まりにくい、信頼関係を築きにくいのならば、オンライン選考のみの内定者は辞退率が高いのも肯ける。
- 対面相談に移行して
2年ぶりに大学での相談業務がオンラインから対面になった。川島氏の記事を意識したわけではないが、確かに両者の間では「共感」の強さに大きな違いがある。
オンラインでは、不安な学生に寄り添い、励ますには多くの言葉をかける必要があった。しかし、対面になってからは目を見て一言、二言かけるだけで笑顔になるケースがほとんどだ。
裏を返せば、オンラインで信頼関係を構築するには、より相手に寄り添った丁寧な言葉がけが鍵になる。
現段階では選考の初期段階ではオンライン、最終で対面というハイブリッドが一般的だ。しかし、むしろ早い段階に一度対面を取り入れて、信頼関係を築いて入社へのモチベーションを高めたほうがいいのではないか?
「この人たちと働きたい」と思える場作りにうまく対面を取り入れる、そんなスタイルで良い人材の確保につなげてほしい。