労働あ・ら・かると
Withコロナニューノーマル いろはかるた2024
一般社団法人 日本人材紹介事業協会 相談室長 岸 健二
新年明けましておめでとうございます。
油断大敵ではあるものの、未曽有の新型コロナ感染症禍がやっと鎮静化している中のお正月ですが、読者の皆様におかれましてはどのようにお過ごしでしょうか?
記憶を風化させず持続することが大切だと思い、毎年同じこと繰り返して恐縮ですが、新年のご挨拶に付言して申し上げます。
被災後13度目の正月に、未だ故郷に帰還できない大震災・原発事故被災者の方々、福島にて被曝の危険の中黙々と廃炉作業等に従事している方々、日本各地での災害に遭われた方々、ウクライナ、ガザ中東、ミャンマー、挙げれば悲しいことにキリのない世界中の戦乱や困窮の中にある人びとと、熱い心で被災者支援活動をされている方々、そして何よりこの間のパンデミックに対処し続けた医療従事者の方々と社会を維持しているエッセンシャルワーカーの方々に思いを寄せながら迎えた、筆者の新年です。
「働き方改革 いろはかるた」が一巡しましたので、昨年からは「Withコロナニューノーマル いろはかるた」をお届けしています。
る ルールを知って守る人くぐろうとする人
新型コロナで見えにくくなった面もあるかもしれませんが、「働き方改革」は着々と進んでいます。「働くルール」の変更も加速されましたが、社会保険労務士の方に伺うと、牽連する相談・ご質問には二種類あると嘆きます。良心的に「どのように就業規則を改訂して運用すれば適切ですか?」という方と、「どうすればお役所に捕まらないで済みますか?という質問ばかりする方」とです。後者の方が経営する企業の「雇い方改革」の道は遠いように思います。
を 恐れる心に科学的知見を
パンデミックの真っ最中には「内定書に『入社日までの間に新型コロナに感染したら内定を取り消す』と記載されている。」という相談を複数受けました。感染症対策に必死で従事する医師の方の言葉に「未知のウィルスに油断してはならないけど、科学的に冷静に恐れないと、社会的混乱をまねく。」というのがありました。非科学的なパニックに振り回されずにいたいものです。
わ ワクチンのリスクとメリット検証を
新型コロナウイルスワクチン接種時の副反応による被害が報道されています。
ジェンナー以来、人類が様々な感染症に立ち向かうために重要な役割を果たしてきたワクチンですが、残念なことに一定の副反応があることも事実です。
その安全性について十分に審査されたはずなのですが、被害に会われてしまった方に心からお見舞い申し上げるとともに、どうすれば防げたのか、今だからこそできるはずの、冷静な検証と教訓化が必要だと思います。
か 家事育児改革も働き方改革と表裏一体
「働き方改革は雇い方改革」「働き方改革は休み方改革」などと言われていますが、新型コロナ感染症対策によって、テレワーク・在宅勤務の普及が加速したことは間違いないでしょう。通勤時間の節約により、男性も女性も家事育児に割ける時間が確保できたとよく聞きます。昨年7月31日に発表された厚生労働省「イクメンプロジェクト」による「令和5年度男性の育児休業等取得率の公表状況調査」(速報値)によれば、従業員1000人超企業1385社への調査で、男性育休等取得率は46.2%、男性の育休等平均取得日数は46.5日となり、男性育休取得率を公表することが、育休取得の促進だけでなく、人材獲得の面でも効果を感じている企業が多いそうです。
よ よく手を洗う習慣は忘れずに
最初は「まるで外科医の手術前の手洗いのようだ」と思いながら、帰宅時に手をあらっていましたが、ついつい油断してコロナ前の洗い方で済まそうとする自分がいます。
せっかく身についた良き習慣ですし、インフルエンザ対策にもなるのですから、手洗い・うがいの習慣は続けたいものです。
た 体調の自己管理習慣の定着を
新型コロナウイルス対策特別措置法による緊急事態宣言が出されて以降、朝晩の体温測定に加えて血圧、酸素濃度、体重を測定して記帳する習慣が身につきました。最初は面倒だと思ったこともあったのですが、「石の上にも三年」とはよく言ったもの、体調自己管理の習慣がすっかり身につきました。「継続は力なり」を再認識しています。
れ 令和の時代のパンデミックを語り継ぐ
もう少し経つと、中世のペストや19世紀のコレラ、第一次大戦後のスペイン風邪などのように教科書にも今回のCOVID-19について記載されることになるのでしょう。大学生活の大部分を在宅で過ごさなければならなかった多くの若い人材も社会人になっていくのですから、何十年か先には後輩にその経験と教訓を語り継ぐこと忘れないでほしいものです。
そ ソーシャルワーカーの待遇改善は喫緊の課題
今回のパンデミックに対して、果敢に健気に立ち向かった医療・保健関係者の方々をはじめとするソーシャルワーカーの方々の重要性について、全国的全世界的にこれほどまで認識が高まったことは従来なかったのではないでしょうか。
従来労働集約的な要素が大きかったこれらのお仕事について、ロボットをはじめとした先端技術の導入で、「人でなければできない仕事」に人的資源を集中できる環境整備が求められます。そして、なによりその賃金水準を他産業より劣らないものにしないと、社会を支える仕組みが崩壊しかねません。
つ つながらない権利とどこでもつなげる便利さ
2016年にフランスで労働法が改正された際に、従業員50人以上の企業では、従業員は勤務時間外のメールなどを遮断する権利を有することを定款に明記することとなった「つながらない権利」は、世界的に話題になりました。
日本でも、勤務時間外のメールへの対応が従業員の負担になるとして、禁止する企業が出始めているそうですが、少なくとも筆者の場合は「どこでもつなげる便利さ」があるので、以前より旅行にも行けるようになったと実感しています。
このテレワークの普及を加速させたのも、今回のパンデミックですね。
ね 年次有給休暇取得も使用者の義務に
新型コロナ感染症とは無縁な話ですが、ニューノーマルを感じさせるのが計画的に年次有給休暇を一定日数「取得させる」義務が使用者に課せられたことです。
昭和世代の筆者にとっては「年次有給休暇は労働者が請求するもの」だったわけですが、令和の時代は使用者が時季を指定して付与させる労働基準法のルールが定められ、それに違反した場合は、罰金などが科せられる場合があることになりました。
(注:この記事は、岸健二個人の責任にて執筆したものであり、人材協を代表した意見でも、公式見解でもありません。)