インフォメーション

労働あ・ら・かると

まもなく社会人となる若い人材の方々へ

一般社団法人 日本人材紹介事業協会 相談室長 岸 健二

未曾有のコロナ禍下で学生時代の大半を過ごし、間もなく学生生活と別れを告げて社会人としてスタートされるみなさん、あらためて卒業おめでとう、そして就職おめでとうと申し上げます。

第一志望の企業に入社した方もいれば第二志望に入社することに甘んじた方もいらっしゃるでしょう。
新しい環境に面食らったり幻滅したりすることもあることでしょうが、「石の上にも三年」とはよく言ったもの。これからの一年間はいわば予習。安易に無計画なドロップアウトをするのではなく、まずは自分の今後の人生と企業の将来性を見すえた情報収集活動をしていくことが大切ではないでしょうか。見ること聞くこと新しいことばかりでしょうが、思いっきりいろいろなことを吸収して、これからに備える意識を持ってください。
そして二年目はいわば復習。学生時代とは異なった状況に置かれ、新たな視野が身についたはずですから、それらを活かして仕事に邁進しましょう。
三年目となれば上司も人事担当者も、みなさんの成長具合を見極め、次のステージを考え始めるのが、多くの新卒採用を行う大企業や中小企業の状況ではないでしょうか。

このコロナ禍というパンデミックは否応なく様々な変化のスピードを速めました。加えてウクライナへのロシアの侵攻、パレスチナ自治区・中東での武力衝突激化をはじめ、国際社会や日本経済の将来予測は、ますます難しくなっているのが現状です。もちろんみなさんが就職した企業のこれからも同様で、それぞれにけして楽ではない中、先輩や経営陣が知恵も汗もふり絞ってそれぞれの職務に邁進している姿を、これから間近に見聞きすることでしょう。

少子高齢化や産業構造の急速な変化などを背景として「働き方改革」関連法が次々と施行され、雇用形態の多様化が進み、働くしくみの大きな変革が進められています。また、IT技術の進歩・生成AIの登場によって、テレワークをはじめ仕事の進め方も劇的に変化しています。
このような転換期にあっても、確かな自己分析と、自分の所属した企業の社会とのかかわりをみつめて検証していく習慣を身につけることができれば、これほど力強いことはありません。

私は長い間転職の場に居合わせてきました。そこでは、どんなに優れた能力をお持ちであっても、ご自分の職業プランをしっかりと整理して見つめていらっしゃる方は意外に少ないと感じたものでした。筆者自身もこの年齢になっても自省することが多過ぎるといえるほどなのですが、転職・再就職を考える人材の方々のかたわらに立ってこのことを痛感してきたからこそ、「石の上にも三年」とあえて申し上げたいのです。

拙編書「業界と職種がわかる本(成美堂出版)にも毎年書いてきたことですが、今は大手・中小を問わず、いずれの企業に就職しても、どのような雇用形態で働くことになっても、そこで安住することなく、客観的な情報収集と自己研鑽を続けることが必要な時代です。
「どのようなモノ・サービス」を社会に提供していく産業・企業を自分は希望したのか。これから働く場で自分の「どのような能力・スキル」を磨いて「どのような職種」に就いて力を発揮していくのかという基本的なプランを明確に意識し続ければ、今後職業生活の様々な変化やトラブルに遭遇したときでも、混乱せずに対処できるのではないでしょうか。

「働き方改革」は法改正のみで行われるのではなく、人材自身の努力による生産性の向上なしに実現できるものではありません。
若いみなさんとって、働くことなしに職務能力を習熟させることは困難ですし、企業側にしても人材なくしてビジネスの伸長はあり得ません。
産業構造の大変動があっても、人材を求めるニーズは必ず存在します。短期的な視野で自分を見失うことなく、生涯にわたって継続的に自らの向上に励んでいただきたいと思っています。

みなさんが、充実した職業生活の第一歩を踏み出されることを心から願っています。新たなスタートにもう一度 おめでとう!

(注:この記事は、岸健二個人の責任にて執筆したものであり、人材協を代表した意見でも、公式見解でもありません。)