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労働あ・ら・かると

応募者がサッパリ集まらない会社は労働条件を見直そう

社会保険労務士 川越雄一

 

求人を出しても応募のない会社も少なくありません。その原因の一つは労働条件(賃金・労働時間・休日)が世間並みでない場合です。「働きやすい」「やりがい」とはいうものの、いわゆる労働条件が世間並みでないと話になりません。ですから、応募のない会社は今一度、労働条件の見直しが必要なのです。

1.賃金は明確にしておく
中小企業の雇用関係において賃金は最も重要かもしれません。賃金額が世間並みであることに加えて、その支払い方が明確であることがポイントです。
●もらえる額が予想できると安心
求職者が求人票の記載内容から、だいたいどれくらいの賃金がもらえるかを予想できると安心です。例えば、多くの居酒屋ではメニュー表に価格が書いてあり、場合にはよっては注文に使うタブレット端末に現時点での飲食代金が表示され安心します。これが高級割烹で「時価」となっていると不安で食べた気になりませんが、それと同じです。
●理由のある賃金幅を設ける
私は賃金額の表示は「250,000円から250,000円」のように定額表示が良いと思っています。会社の求める人材像を明確にできるからです。しかし、応募のない会社はできるだけ門戸を広げておく必要があります。そこで、経験者と未経験者、年齢、保有資格等により、意味のある範囲で賃金額に幅を持たせることも考えられます。ただ、やみくもに「200,000円から400,000円」ではサクラ的な求人票になりますから逆効果です。
●先行きの見込みも提示する
求人票には採用時の賃金額を提示しますが、先行きの見込み額も書いておくと応募がしやすくなります。もちろん、前提条件は詳しく書いておきます。例えば、採用後の〇年経過、〇〇資格取得時などの条件別にモデル賃金額を示すことも考えられます。こうしておけば、仮に経験や必要な資格がない人でも、頑張れば賃金が増えることが分かり励みになります。

2.労働時間の区分を明確にしておく
就職すれば一日の大半を職場で過ごすわけですから労働時間は重要です。特に残業時間も含めた拘束時間は生活に直結していますからなおさらです。
●雇用関係は労働時間の売り買い
雇用関係は基本的に労働者の労働時間を雇用主が賃金という対価で買うことではないでしょうか。もちろん「仕事は労働時間ではない」という考え方もありますが、それは経営者層の話であり一般労働者、ましてこれから応募しようとする人には通じません。そもそも労働時間を気にしないような人は、ハローワーク求人にはなじまないのです。
●実際に何時に来て何時に帰ることができるのか
今の法定労働時間は原則1週40時間、1日8時間ですから、求人票にもその範囲で始業・終業時刻を記載します。また、実際に何時に来て何時に帰ることができるのか、つまり残業がどの程度あるのかの記載もあったほうが良いです。もちろん、ここで残業が月に40時間以上もあると求職者の関心はそこで途切れてしまいます。
●固定(定額)時間外の設定は慎重に行う
残業時間にかかわらず一定額を残業代として払う制度に固定時間外があります。もちろん、設定時間を超えた場合は別途残業代が必要です。しかし、「定額払い・残業させ放題」のイメージがあり、一つ間違うと求職者から「ブラック企業っぽい」との印象を受けますから注意が必要です。今の時代、仮に制度を導入するにしても1カ月5時間分くらいが妥当です。

3.良くも悪くも休みやすさは求人の大きなポイント
法律上、週休2日が義務付けられているわけではありませんが、求職者から選んでもらうには年間最低100日以上の休日は必要です。今はそんな時代です。
●年間100日未満だと求人票を見てもらえない
休日は100日以上が最低条件です。それ未満だと求人票検索にもヒットしません。つまり、せっかく求人票を出しても社名すら求職者の目に止まらないのです。今は学校も昔と違い週休2日です。もちろん、一流大学をめざして勉強してきたような人は休日返上で勉強したでしょうが、そのような人はサッパリ応募がないような会社を就職先の対象にはしていません。
●休日と休暇は別に考える
休日と似たようなものに休暇があります。これら2つは混同されやすいのですが、似て非なるものですから区別しておきます。休日は会社が指定するもので、休暇は労働者が指定して休むものです。休暇の代表格は年次有給休暇ですが、これは年間100日以上の休日とは別枠です。もちろん、年次有給休暇の取りやすさは求人上大きなポイントです。
●同業他社と差別化する
年間休日100日以上は衛生要因にはなるにしても動機づけにはなりにくいです。例えば、今の時代、自動車が故障なく走ったとしても、それは当たり前であり「この車は素晴らしい!」ということにはなりにくいのと同じです。仮に、同業他社と休日数が同レベルであれば1日でも2日でもそれを上回ることにより差別化する必要があります。同業他社は人材採用でもライバルなのです。

サッパリ応募がない場合、まずは最低でも労働条件を世間並み、できればそのちょっと上に設定することが必要なのです。