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労働あ・ら・かると

「ゆるブラック」って何?

就職・採用アナリスト 斎藤 幸江

●まだ低い就活生の認知
最近、20〜30代の転職動機として注目される「ゆるブラック」。待遇は悪くなく、労働時間も長くないが、成長ややりがいを感じられない企業のことだ。
しかし、一方で、こうした言葉を知らない就活生も少なくない。
処遇や休日日数、残業の有無などにこだわる学生に、「ゆるブラックかどうかは、気にしないの?」と聞くと、驚いた顔で「なんですか、それ?」と聞き返される。
「マイナビ 2025年卒 大学生インターンシップ・就職活動準備実態調査」(2023年10月調査 調査対象は25年3月卒業予定者2067人)では、「ゆるブラック」という言葉を知っているか、聞いたことがあるかを聞いている。その結果は、「知らない、聞いたことがない」が82.2%、「知っているが、意味はよくわからない」が9.8%で、ほぼすべての学生が、認識していないことがわかった。
そのせいか、学生の進路先選定の条件から、漏れやすい。そこそこの給料がもらえて、オンとオフの切り替えができるならば、それで充分と考える就活生も、まだまだ多い。

●実感しにくい「ゆるさ」の弊害
「ゆるブラック」を知らないという25卒の就活生に、今は、それを理由に転職する人も増えているよと解説した。すると「あ、そういうことか」と納得顔を見せる。何があったのかと聞いたら、最近、志望企業にOG訪問をしたという。
「とても待遇がいい会社で、説明会でもホワイトをアピールしていたんです。休暇もちゃんと取れるし、残業もほとんどない。アットホームで雰囲気もゆるやか。
そんな職場なら長く働けるんじゃないかな?って思ったものの、実態はどうか心配になって。
それでOG訪問をしたんです」
本当に残業はないのか、給与は提示通りの額をもらえるのか、休暇や福利厚生も求人情報どおりなのかと、気になる点をひとつひとつ確認していった。すべて、事実と齟齬がないとわかって安心したところ、話し終えた先輩が怖い顔をして、キッパリこう言ったという。
「今、聞いてくれたことは、本当にその通り。でも一言だけ、言わせて。
ここの仕事、1ミリもやりがいがない。働いていて全然面白くないから」
私はバリバリ働こうという意欲がないので、別に多少、つまらなくても、ラクな方がいいと、聞き流していたんですけれど。先輩が言いたかったのは、「ウチはゆるブラックだから辞めたほうがいいよ」ということだったんですね––。と就活生はため息をついた。

●根強い、職場への不安と怖れ
25卒や26卒を対象に実施している授業の中でも、「ゆるブラック? 別に問題ないのでは?」という学生が一定数いる。
そういう職場は優秀な社員がどんどん辞めて、将来的に成長が見込めなくなる。その時にあなた自身が転職したいと思っても、十分な経験値が身についていなければ、それもできないよ、と少し脅し気味に話す。それでも、「ブラックより人間らしく生きられるからいい」と肯定的な見方を変えない学生はいる。
こうした発言の根底には、今なお「職場は辛い、仕事はキツイ」という根強い先入観がある。だから、「楽で安全なら問題がないのでは?」と思ってしまうのだ。
しかし、就職すると「ゆるブラックからの転職」への肯定度は高い。「社会人5700人に聞いた『ブラック企業・ゆるブラック企業』調査」(2023年 エン・ジャパン調べ『エン転職』ユーザー対象)では、「ゆるブラック企業だから」という理由での転職を肯定する20代は、81%を占めた(「同意できる」+「どちらかといえば同意できる」)。
かつて「地獄の6時間より、天国の8時間」という名言を後輩に伝えた卒業生がいた。自分の存在価値や成長を実感でき、貢献意欲につながるかどうかが、働く楽しみを生む。
これから始まる夏のインターンシップで、ぜひ、彼らに「やりがいの価値」を伝えてほしい。