インフォメーション

労働あ・ら・かると

採用面接は「4:2:4」を意識しよう

社会保険労務士 川越雄一

 

採用難が常態化している昨今、人材の確保はすでに“椅子取りゲーム”です。つまり、限られた人材を求人企業同士で取り合うという状況です。そのため、採用面接では人選するというより、応募者から自社を選んでもらうという姿勢が重要になっています。採用面接を準備、本番、そして面接後の3つに分けた場合、注力すべき比率は「4:2:4」です。

1.面接準備(根回し)は4割
人選できる状況にはないとはいうものの、誰でも採用して良いわけではありませんから、応募者の見極めは必要です。その見極めにはこの段階が最適です。
●封筒を開ける前に人柄などを見る
封筒というのは応募書類が送られてきたものです。面接本番では応募者をジロジロ見ることはできませんが、封筒は自由に見ることができます。切手の貼り方、封の仕方、宛名の書き方など、見る気になればいくつものポイントがあります。面接慣れしている人であれば、面接本番でボロを出すことはありませんが、意外に郵送用封筒は盲点なのです。
●応募者アンケートでミスマッチを防ぐ
応募者アンケートというのは私が以前から提案していますが、病院でいうところの問診票みたいなものです。会社の基本方針などに関する質問を中心に作りますが、面接前に送付して当日持参してもらいます。中には会社方針に合わず面接を辞退する人もいますが、面接をしても結果は同じですから、それで良いのです。
●面接日の通知でキリっとさせる
面接日の通知はキチンと行い応募者をキリっとさせます。例えば、電話やメールで面接日時を連絡したうえで、別途郵便で通知します。「小さな会社なのに意外とキチンとしているかも」となればしめたものです。また、仮に書類選考で面接をしない場合は、丁重に文書でお断りします。この対応が会社の評価を大きく左右します。

2.面接本番は2割
面接本番に注力すべきは当たり前ですが、割合としては2割です。なぜなら、面接だけで人を見抜くのは難しいからです。どちらかといえば、気持ちよく始め、気持ちよく終えて会社に好感を持ってもらうことが重要です。
●面接のことを社内に周知しておく
面接日時と応募者のことを社内に周知しておきます。応募者が最初に出会うのは面接担当者ではなく受付等の方であり、その対応が会社全体の第一印象になるからです。「○○さんですね、お待ちしておりました」と笑顔で対応をされれば、会社への好感はグンと高まります。第一印象は一瞬で決まりますから、社内への周知は重要です。
●面接は話三分に聴き七分
面接では応募者から必要なことを聞き出すことが重要です。最初に会社や仕事内容を説明したら、応募者が話しやすい雰囲気をつくります。割合としては話三分に聴き七分です。間違っても面接担当者のワンマンショーにならないように気をつけます。面接では応募者に話を振るとホンネが出やすく人柄などもつかみやすくなります。
●労働条件は詰めておく
面接は雇用関係に入ることを前提に行いますから、労働条件は詰めておく必要があります。もちろん、求人票に書かれたとおりであれば、それを確認する程度で良いのですが、賃金額等で幅を持たせている場合は、キチンと詰めておくことが重要です。この段階で曖昧にしておくと、お互いに「こんなはずじゃなかった」と後々苦労します。

3.面接後のフォロー(後回し)は4割
採用面接で気をつけるべきは採用辞退です。人材の確保はすでに“椅子取りゲーム”ですから、面接後は他の求人企業に浮気されないための対策が必要です。特に中小・無名企業はここが肝です。後回しは筆者の造語で事後の根回しの略です。
●面接来社のお礼ハガキを差し出す
「本日は採用面接にご来社いただきありがとうございました」というようなことを書いたお礼ハガキを面接当日に差し出します。差出人は面接担当者またはトップです。ポイントは、手書きです。内容や字のうまい下手はともかく手書きにこだわります。相手に伝わる熱量が全然違います。郵便料金が値上がりしても100円以内で済みます。
●できれば手土産を渡す
めったに手土産を渡す会社はないので差別化になります。手土産は千円程度のお菓子で良いと思います。面接での好感をできるだけ持続させるためには、応募者がもらったお菓子を家族と一緒に食べるなど五感に訴えることが有効です。また、お礼ハガキもそうですが、応募者家族の目に触れることが重要です。採用において家族を味方につけるのは鉄則です。
●採用・不採用通知は早く行う
面接後の採用・不採用通知は早さが必要です。面接後できれば3日以内に行います。複数社面接を受け、レベルが同じ程度の場合、先に採用通知をもらったほうに気持ちが傾きやすいからです。まず電話で一報を入れ、その後に採用通知書を文書で郵送します。不採用の場合は採用よりも丁重な文書で行います。

キチンとした人ほどキチンとした会社を好みます。ですから採用面接の過程において、他の求人企業と差別化した施策により、応募者に選んでもらえる会社になることが必要なのです。