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65歳新入社員管理職で重宝される人・そうでもない人

社会保険労務士 川越雄一

 

中小企業では、いきなり「〇〇部長」としての中途採用もめずらしくありません。多くは役所や大手企業を60歳又は65歳の定年で退職した方々です。私は「65歳新入社員管理職」と呼んでいますが、「重宝される人」と「そうでもない人」がハッキリしています。当然、前者が良いのですが、そのために会社としてどのような工夫が必要なのでしょうか。

 

1.重宝される人

65歳以降、70歳までの継続雇用等は会社の努力義務となっています。しかし、重宝される人というのは、法律上はともかく70歳を過ぎても会社が手放せないので働き続けることができています。

●会社のことを好きになろうとする人

生活の糧である賃金を得る会社ですから、会社を大好きにはならなくても、ある程度は好きになろうとすることは必要です。会社のことが好きになればこそ、会社を良くしようと本気で考えるようになるからです。そうなりますと、先輩である部下も、その人のことを好きになります。良くも悪くも、こちらの思いは相手に伝わりやすいものです。

●部下を信頼する人

一緒に仕事をしていくうえで、部下とのコミュニケーションは必須です。これを深めるには信頼関係が必要です。しかし、先輩である部下にしてみれば、新たに採用された「〇〇部長」を、いきなり信頼しろと言われても無理があります。ですから、まずは自分から部下を信頼します。そうすれば、部下も「この人なら信じられる、ついていける」ということになります。

●自分の役割を理解できる人

中小企業の場合は人事権をはじめ、ほとんどの権限はオーナーである社長に集中しています。ですから、管理職とはいえ、どちらかといえば中間管理職です。オーナーと部下の橋渡し役といっても良いかもしれません。この役割が理解できていると、仕事もうまく運びます。中小企業が65歳新入社員管理職を採用する主な目的はこれかもしれません。

 

2.そうでもない人

それなりの役割を期待して採用はしたものの、そうでもない人が一定割合存在します。結果として職場内で浮いてしまい、残念ながら早期離職せざるを得ない状況を招きます。

●名誉職感覚の人

大手企業や役所を定年まで勤め上げた人の中には、その経歴を見込まれ名誉職的なポストで採用される人もいます。もちろん、そのような側面もあるかもしれませんが、中小企業にはそれだけで賃金を払えるだけの余裕はありません。会社としては、どちらかといえば実戦部隊に近い働きを期待しています。そこで両者に大きな食い違いが生じます。

●分っていないことが分かっていない人

自分を過大評価していますから、分っていないことが分かっていません。言い方を変えれば、分っていないのに分っているつもりでいます。実は、この感覚が会社にとっては一番キケンですし、部下からも嫌われます。「そのくらい分っているよ」という態度に、部下も「だったら、お好きにやられたらどうですか」ということになります。

●部下に愚痴を吐く人

たとえ新入社員であっても上司は上司です。愚痴を吐かれても正面切って反論などできません。それをいいことに「ここの仕事は特殊だ」「経営者は何を考えているのか」「この会社では、まともな人は勤まらない」などと部下に向かって愚痴を吐きます。部下も口には出せなくても、腹の中では「そんなに嫌な会社ならサッサとお辞めになったら」です。

 

3.だから採用前にこれだけは伝えておく

そうでもない人も好きでそうなるわけではなく、多くの場合は本人の勘違いからくるものです。会社から採用前に「こうあってほしい」を伝えれば、理解してくれる人も多いと思います。中には「だったら入社しません」という人もいるかもしれませんが、採用後にもめるよりましです。

●採用の目的を理解していただく

会社の65歳新入社員採用目的はハッキリしています。自社の生え抜きでは難しい役割を担っていただくことです。例えば、総務部長であれば労務管理や対外文書の起案、関係団体等との調整などです。中小企業でも管理職となれば今いる従業員より賃金は高いはずです。会社がそこまでして採用する目的をキチンと伝えます。

●自分のモチベーションアップは自分で考えていただく

会社は65歳新入社員のモチベーションアップまで気に掛ける余裕がありません。ですから、自分自身で資格試験に挑戦するとか、仕事以外のイベントにも積極的に参加し職場に溶け込むなどします。溶け込むことより当初示された雇用上限年齢を超えて、雇用を継続してもらえるというのもモチベーションになるかもしれません。

●終(つい)の職場と心得ていただく

若い人ならキャリアアップを目指して転職もあるでしょう。しかし、65歳という年齢からしてそれは難しく、終の職場と心得ていただくことが現実的です。だからこそ、気持ちよく仕事をし、気持ちよく職業生活を終えてほしいものです。終わりが良ければ、途中多少問題があってもすべてが良くなります。

 

65歳新入社員管理職で重宝される人というのは実にありがたい存在ですが、そうするためにも採用前に伝えるべきことをキチンと伝えておくべきなのです。