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今月のテーマ(2012年06月)人事賃金等処遇制度をどのように評価するか

人事・賃金等の処遇制度は、企業経営や従業員の働く意欲に大きな影響を与えるため、企業が持続的成長をしていく上での重要事項である。

戦後わが国の処遇制度は、学歴、年齢・勤続等をベースにした年功的処遇から職務・職能等級、職能資格、役割等級など経営環境・従業員の意識の変化を反映して変わってきた。その過程で能力主義、実力主義、結果主義、成果主義という言葉が処遇制度を表す言葉としてよく使われ、その良し悪しが議論されてきた。

導入当初は、珍しさや制度の内容がよく分からないこともあってか、良い面について評価をされるが、時間が経過すると問題点が強く指摘されるようになるのが一般的であった。導入当初と経営環境が変わったことや、管理・運用が的確に行われないことで問題点が出てくる場合もあり、制度の評価がそのような流れになることは理解できる面もある。

その際、企業は経営環境や従業員の意識と制度のズレの大きさで現行制度を抜本的に見直すか、一部の修正で対応できるか判断することになる。企業サイドとしては、常に経営環境の変化や従業員の制度についての意見を的確に把握して、問題が大きくなる前に対応することが重要となる。

処遇制度は各社各様で、制度のネーミングと制度の内容や管理・運用がよくマッチしていない場合もある。職務等級制度と言いながら職務分析・調査が実施されていない。職能資格制度の導入で、能力主義の徹底と言いながら管理・運用が年功的になっている。また、導入前に、制度の趣旨が従業員によく理解されていないために導入後混乱し、制度に対する従業員の信頼感がなくなるなどいろいろな問題が出てくる。

このような個々の企業の問題とも関連するが、もう少し広い捉え方としてよく議論されるのが、年功主義、能力主義、実力主義、結果主義、成果主義の良し悪しの評価である。最近では、2004年頃に成果主義がいろいろな批判を浴びたことは記憶に新しい。成果主義といわれている処遇制度は2000年以降、企業に多く導入されるようになったが、問題点の指摘としては、成果主義の名の下に人件費の削減を狙っている、目標設定の内容が短期的で中長期の重要事項が入っていない、上司が部下の教育をしなくなる、職場のチームワークがとりにくくなる、公正な評価がされていない、日本には成果主義より年功主義があっている、仕事のプロセスを評価しないで結果主義になっている等々である。

制度の趣旨や評価の仕方が従業員に十分理解されない中で実施するなど拙速に走り、それらの批判を浴びた企業も少なからずあったように思われる。

指摘されているような問題は、導入前に検討すればある程度は防げる内容である。制度は実施してから問題が出てくる場合があるが、処遇の理念等基本線さえ的確であれば、一部の見直しで対応可能である。そのことによって、制度全体が否定されるものではないであろう。制度の見直しには、常に良い点と問題になりそうな点がある。そのような状況下でどのような制度を選択するかは、今後の経営環境、従業員、企業の考え方を検討して決定することになる。成果主義の処遇制度が企業に多く導入されるようになってきたのは、時代にマッチし、メリットがあるとの判断の結果であろう。

制度の見直しに当たっては、トップが経営ビジョンとの関連で処遇方針を明確に示すことが重要である。処遇担当部門はそれを受けて制度の組み立て方、事前事後の従業員への丁寧な説明、制度の趣旨にあった管理・運用を的確に行って、処遇制度に対する従業員の信頼性を高めていく必要がある。

グローバル競争が激化し、年功的要素を抱えて処遇してきた職能資格制度では対応できずに、職務・役割・成果を重視した制度に切り替え、企業が成果主義の処遇制度を求めたことはある種当然の流れであろう。最近の調査を見ても、上場企業では成果主義がかなり高い比率で導入されており、中小企業も成果色を強めつつある。

処遇制度の見方として、年功主義、能力主義、実力主義、結果主事、成果主義などの言葉があるわけだが、これらの使われ方が明確でないことも処遇制度の評価を困難にしている。

年功主義は年齢・勤続・学歴等にベースをおいた処遇である。能力主義は成果主義と混同される場合もあるが、基本的には発揮能力(顕在能力)がベースで、潜在的能力を含めて評価しているところもある。実力主義は学歴・勤続等を問わず実力を発揮したものを評価するということで、結果主義はプロセスに関係なく結果がすべての処遇制度である。成果主義を結果主義と同じ意味合いで使う人もいる。しかし、成果主義は結果主義と異なり、成果を上げるまでの仕事の進め方や仕事を通じて職場内外との協力関係、ノウハウの蓄積等のプロセスも含めて評価するものである。それぞれの意味合いを理解して使わないと混乱が生ずることになる。

人事・賃金等処遇制度を変えても業績がよくならないとか、制度の内容がよくても管理・運用がよくない、上司の評価の仕方が悪い等から始まって、自分の働きはさておき、自分の評価が悪いと制度自体がよくないと批判する場合もある。それらがすべて制度の問題なのか考えてみる必要がある。

不満や批判だけでは処遇制度はよくならない。制度の見直しに当たっては、経営環境の変化を見通しつつ、それぞれの制度のメリット・デメリットを十分検討、評価して自社にあった制度を導入することがもっとも大切である。

【MMC総研代表小柳勝二郎】