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22卒採用の準備の前に

就職アナリスト 夏目 孝吉

 

■コロナ汚染に襲われた21卒の採用も終盤となった。コロナ汚染が拡大し始めたのが3月上旬、すでに大手企業は、面接段階に入っていたので、会社説明会や面接をオンラインに切り替えることでコロナ汚染を回避、その後もさまざまなチャネルを通じて採用活動を継続、学生の就職内定率は、大手就職情報会社ディスコの調査(※)によれば、4月上旬で34.7%、5月上旬が50.2%と昨年以上のハイピッチで進行、6月下旬には、21卒の採用活動は終わることになりそうだ。その高い内定率の推移を見れば、順調に見える採用活動だが、3月から5月までの3か月間、企業や学生は、予想もしなかった環境の激変、企業業績の急落、採用活動の中断、最終面接の延期などに見舞われ、綱渡りのような採用活動や就職活動を続けてきたのである。そうしたなかで、大きな役割を果たしたのが、オンライン面接とインターンシップだった。22卒の採用活動のスタートにあたり、この2点と新しい新卒採用への取り組みを確認しておこう。

 

 

1.HRテクノロジーが採用業務を変えた

コロナ禍に襲われた21採用では、会社説明会が相次いで中止となったため多くの企業はオンラインでの会社説明会を実施した。その多くは、企業が録画した画像をホームページや就職サイトにアップするオンデマンド型だった。そのため内容は充実しているが、リアリティとインパクトがなかった。今回のコロナ禍は、こうした従来のホームページや会社説明会をライブ型に刷新、最新のHRテクノロジーを活用したことで企業は、学生のコミュニケーションを維持しながら採用効率を高めた。

 

このHRテクノロジーの活用が最も有効だったのは、採用選考の中心である面接だった。今年の2月までは、動画提出とかAIによるロボット面接というレベルだったが、コロナ汚染拡大の3月からは、ライブ型のオンライン面接が急増した。その機能は、応募者のエントリーシートに基づく質疑応答だけでなく、面接における人物評価、WEBテスト評価など選考プロセスのすべてを一元管理するものとして採用業務を軽減化し、選考プロセスのスピードアップを実現した。コロナ汚染の収束次第だが、来年の採用選考では、リアルな会社説明会や面接が復活をするかもしれない。

 

しかし、今回の経験でHRテクノロジーがコロナ対策だけでなく、会社説明会や面接でも大きなメリットがあることは多くの企業が理解したはずだ。22卒の採用活動をスタートするにあたり、採用担当者はこうしたHRテクノロジーの現状や評価、新製品について常に情報を集め、ウォッチしておくことが必要だろう。

 

 

2.インターンシップが21採用を支えた

コロナ汚染によって3月からの合同説明会や面談会は、中止、延期された。しかし、多くの大手企業が、学生との対面型の接触は続けながらもスケジュール通りに4月に内定率を3割に伸ばすことができたのは昨年夏のインターンシップに参加した学生たちを多数、手元に囲い込んでいたからだ。コロナ汚染で動きの取れなくなった21採用では、このコアとなる学生を一定数確保していたかどうかが3月からの採用活動において大きな差となった。その決め手は、昨年夏のインターンシップ開催と早期における仕事体験会、エントリー者に対する継続的なフォローだった。

 

そこで22卒の採用にあたり準備しておきたいことは、就職志望(関心でもよい)学生を早期からのインターンシップや就職イベント(仕事体験会など)で集めておくことである。すでに22年卒のための夏季インターンシップのガイダンスセミナーは就職情報会社などの就職サイトでは案内されているが、焦点は、企業が今年の夏にインターンシップをどこまで開催できるかである。コロナ汚染の収束が見えない現在、企業にとっても見通しは容易ではない。リアルが駄目ならと、YOU TUBEやライブ形式のインターンシップも検討されているが、各社とも今からどのように開催できるか、内容や方法、時期について知恵を絞っているところだ。次年度の採用では、コロナの再燃がないことを祈るが、採用活動の途中に採用活動が停止、延期されるような事態を想定すれば、このインターンシップや独自の採用イベント(仕事体験会など)は、再び、採用活動のオルタナティブ(代替案)として大きな効果を発揮することになるだろう。とにかく、新卒を採用する企業なら今年もインターンシップは開催すると宣言し、受け付けを開始しておきたい。当面、開催時期、プログラム内容、規模未定でも仕方あるまい。中止はいつでもできる。まずは、自社に関心を持つ学生を早期から集めておくことだ。

 

 

3.新しい採用方法の開拓

コロナ感染再燃という不安を抱えながらも来年も新卒採用に取り組むとなれば、多くの学生を一か所に集めて説明会をしたり、選考をしたりするという従来の採用広報や採用スケジュール、採用選考の方法だけでなく、採用システムそのものも見直さなくてはならないだろう。今年の採用活動は、HRテクノロジーの導入によって従来の採用、選考フローが大きく変わったが、その有効性の範囲や限界もいくつか明らかにされた。HRテクノロジーによる採用広報や選考では、カバーできない人材の発見やヒューマンタッチを不可欠とする採用手法も新たな発想で検討しておく必要がある。その候補としてあげられるのは、次の3つの採用手法だろう。

 

第一に、ダイレクトリクルーティングである。就職サイトや合同説明会などで採用広報をして学生の応募を待つのでなく、企業側から業者や自社の持つデータベースの中から求める人材を発掘、直接学生にスカウトメールを送って応募を呼びかける採用システムだ。これはHRテクノロジーを活用することで可能だが、最終的には、企業側のリアルな選考活動が不可欠になる。

 

次に注目したいのは、リファーラル採用である。これは、社員や取引先、大学の教員など信頼できる人々が責任をもって紹介や推薦をする採用活動である。既存のデータベースやネット検索とは異なるリアル(確実)でホット(熱心)な人脈ネットワークである。

 

三番目は、新卒紹介。これは、人材紹介会社に依頼するものだが、企業の人材ニーズに合った学生を紹介してもらい、企業は、最終面接をすることで採用を決める。HRテクノロジーでは見つけられない人材を掘り起こし、説得するだけに経費はかかるものの企業の人材ニーズに合った学生を短期的に随時、採用することができるのがメリットだ。

 

これら3つの採用手法は、すでに数年前から一部の企業で導入されているが、評判は聞こえてこない。いまだに就職サイトが圧倒的に効率的で採用効果が大きいからだろう。だが、コロナ汚染がまだ収束したとはいえない22卒採用の時点では、就職サイト中心の採用活動を補完するサブ採用システムとしてこれらの新しい採用手法にトライアルとして取り組んではどうだろうか。

 

 

(※) ディスコ社 キャリタス就活 2021 学生モニター調査結果(2020 年 5 月)