労働あ・ら・かると
インターンシップもオンライン化して22採用がスタート
就職アナリスト 夏目 孝吉
■今年の3月から急拡大した新型コロナウイルスの感染によって、21年卒の採用活動は、大混乱となった。この時期、多くの企業は、会社説明会や面接をスタートさせていたからだ。そのため企業は、採用活動を対面型からオンラインに急遽、切り替えることで、採用活動を継続、なんとか3月から5月の採用活動を乗り切った。
そして7月、採用計画未達の企業が続出する中で、大手企業だけは、早くも22年卒予定の学生を対象にサマーインターンシップの案内を始めた。その案内を見ると、従来の対面型インターンシップに交じってオンライン型インターンシップの案内が目に付くようになった。
すでにコロナ再燃の様相を呈しているだけに今後は、採用活動をオンラインとする企業が増えるとみられるが、オンライン型インターンシップは、これまでのインターンシップとどう違うのか、参加する企業や学生のメリットは何か、今後、新卒採用がどう変わるのか、インターンシップ開幕の時期なので見ておこう。
1.採用活動の多くがオンライン化した
コロナ汚染拡大によって社会全体に対面活動の制約がもとめられたのは3月から。これに伴い、企業のリモートワークが広がり、採用活動もオンライン化が急増、会社説明会から面接、グループディスカッションなどが次々とオンラインで行われるようになった。
立教大学の中原淳教授たちが5月下旬に発表した「企業の採用活動におけるオンライン面接の可能性と課題」という調査がある。これによると、コロナ汚染拡大の影響で、企業の21年卒の採用活動は、会社説明会が83.1%、一次面接は95.6%、二次面接が71.3%、最終面接でも58.1%がオンラインで行われたと報告されいる。
昨年までオンラインでの採用活動は話題にはなっていたが、実際にオンラインによる面接などをしていたのはIT企業や就職人気企業など十数社で、二次面接や最終面接をオンラインで行うという企業はごく少数だった。
それがこの激増ぶりだ。コロナ汚染という突発的な災害への緊急対応だったが、企業・学生ともに2月から4月という短期間でよくぞオンライン化に対応できたと驚く。この背景には、タイミングの良さもあった。例えば企業の場合は、5G時代が始まるということで数年前から人事分野でもクラウドやデータ解析、企業内ネットワークの構築や電子会議システムの運用、AI導入などに精力的に取り組んでいた。だから、人事採用部門としてもIT活用のインフラはあったのでオンライン採用への転換は迅速に移行することができた。一方、学生の方は生まれつきのデジタル世代だから、スマホやパソコンのリテラシーは十分にあった。オンライン採用に対する心理的な抵抗感はあるが操作にはストレスはない。コロナ禍という非常事態なので好き嫌いを言っている余裕はなかったのでこれまた即座に対応できたのである。こうした素地が学生にできていたからこそ、コロナ禍中の就活において学生は、オンライン採用を従来の慎重な姿勢から一転、メリットを利用すべきものとして歓迎したのだろう。
2.次年度の最重要課題は、インターンシップ
このようにコロナ汚染を契機に爆発的に普及したオンライン採用だが、この流れは、22採用でも変わることなく拡大していくとみられている。そうした21採用の課題を企業に聞いているのがデイスコ社の「採用活動緊急調査」。同調査では「22卒採用で注力したいこと」を企業に聞いている。回答の多かったのは次の通り。
①インターンシップの強化 54.7%
②プレ期の活動の強化 53.7%
③採用活動のオンライン化 47.5%
④採用広報の強化 47.3%
⑤大学との関係強化 41.3%
調査時期は5月下旬だったが、それまでの採用活動とコロナ再燃を考慮した回答として注目される。とりわけ「インターンシップの強化」が第一に挙げられているのは、今年の採用活動を振り返っても納得できる。インターンシップによって早期から学生と接触していてコロナ発生時にはすでに囲い込み体制に入っていた企業の成功例があるからだ。インターンシップこそ早期から学生に接触できる採用広報活動であり、選考手段だからだ。それだけに、今後もコロナ汚染再燃のリスクがある22卒の採用活動においてインターンシップの役割が重要視されるのは当然だろう。
すでにスタートした各社のインターンシップの案内を見てみよう。全体としてインターンシップ開催件数が減った印象だが、その中では、オンラインによる1dayインターンシップ(仕事体験)が増えている。
これは昨年のサマーインターンシップでも同様だったが、リアルでの1dayが大多数だった。今年の場合は、オンラインによる1dayインターンシップ(仕事体験)が大多数となった。そしてコロナ汚染の様子を見ながらリアルなインターンシップを組み合わせて実施しようという計画のようだ。
そのためインターンシップをすべて対面型あるいは、すべてオンライン型とするのでなく、リアル実習(出社)+オンライン実習(在宅)を組み合わせたハイブリッド型が数多く登場している。学生の多くが、そして企業にとっても、どこかの時点で対面したいという願望が強いからだろう。
またオンライン実習(在宅)によるインターンシップには、5daysどころか2週間にわたるものや3か月に及ぶ実習的ないし教育的なものもある。オンラインだからこそできる長期プログラムである。もっとも一部には、長期間の囲い込みを目的にしているという指摘もある。
3.オンラインインターンシップのメリット
企業にとってオンライン採用は、コロナ対策だけでなく、採用戦略として採用対象者をグローバルに広げ、採用活動の通年化を促し、採用担当者の業務量を軽減するなど採用革命ともいえるぐらいメリットが多いが、オンラインによるインターンシップとなるとさらに面接とは違うメリットもある。下記の1から4まではオンライン採用一般のメリットだが、オンラインインターンシップならではのメリットもいくつか挙げておこう。
①多数の学生に参加してもらえる
②遠隔地や海外などにいる学生も参加できる
③学生が自宅などから緊張することなく気軽に参加できる
④実施会場の設営、諸経費など運営業務の負担が軽減できる
⑤会社の各職場や研究所、海外支店などをゆっくり見てもらい、雰囲気を知ってもらえる
⑥実際に職場で働いている社員と話をすることや質問もできるので会社の理解が深まる
⑦実施期間を長期・継続型にすることが内容の充実が可能になった
もちろん、こうしたメリットがある一方でインターンシップの目的である就業体験がオンラインでどこまで学べるのか、という問題点や通信環境の不安定さ、個人情報の保護という課題もある。しかし、これらの問題点は、今後のHRテクノローの発展やVRの導入による就業体験のリアリテイ化、AI技術との融合で徐々に解決すると考えられているのでコロナ汚染が収束してもオンライン採用拡大の動きは止まることはないだろう。
4.オンラインインターンシップは、通年採用へ発展する
最後に、今後のオンラインインターンシップの拡大によって新卒採用がどう変わるのか、5点ほど指摘しておこう。
①オンライン1dayインターンシップ(1日就業体験、実は企業研究)が、増加する
②オンラインインターンシップは随時開催可能なので通年化する
③囲い込みを目的としたオンラインによる長期インターンシップ(実は拘束)が増える
④ハイブリッド型インターンシップは、コロナ汚染の状況次第ですべてオンラインにも
⑤オンラインインターンシップは、通年採用の強力な採用手法として発展する