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「人材サービス総合サイト」 より一層の活用を

一般社団法人 日本人材紹介事業協会 相談室長 岸 健二

 厚生労働大臣による許可・届出制度の下にある、労働者派遣事業や職業紹介事業等の人材ビジネスについて、その制度や最新情報等を周知し、許可を受けたり、届出を済ませた事業者の情報公開を目的とする「人材サービス総合サイト」が開設されたのは、2010(平成22)年3月のことですから、この春で10年を越えたことになります。
 当時(今でも?)無許可・無届出の違法な労働者派遣や職業紹介を行う事業所が存在し、これを利用した労働者が不当な扱いを受けるなどの被害に遭うケースが見受けられるとし、派遣労働者が事業者を選択するに際しての利便性の向上を図ることを第一義の目的としてスタートしたWebページで、労働者派遣事業と職業紹介事業の許・届出事業所一覧が掲載されています。

 筆者が主にかかわる職業紹介に関しても、2017(平成29)年の職業安定法改正を反映して、このサイトでの業界の情報公開が更に進み、従前からの情報公開に加えて、2018(平成30)年1月からは、個々の事業者の年度ごとの紹介就職者数とその内の無期雇用就職者数、更にその内半年後の定着状況(解雇以外での離職者数)、手数料表の内容、返戻金制度(紹介就職から一定期間以内に離職した場合に、手数料の一部を返戻する制度その他これに準ずる制度)の有無と内容などの公表が義務づけられ、任意ではあるものの、その他職業紹介事業者の選択に有用と考えられる情報なども掲載(リンク)することになりました。
 人材派遣に関しては、派遣労働者がどの派遣会社に登録するかを見分けるための、情報公開の要素が前面に押し出されていたように思いますが、職業紹介については、求人者がどの職業紹介事業者に求人を依頼するかを選択するための情報公開という要素も、かなりあるように思います。

 例えば、企業が海外人材を必要とするときに、当該国との「国外にわたる職業紹介」の手続きを済ませた事業者かどうかを調べるには、この「人材サービス総合サイト」の職業紹介事業者(許可・届出事業者の検索のページ) で、「取扱い地域」に例えば「ベトナム」と入力して検索すれば判る仕組みになっていますし、それぞれの事業者の扱い対象が、技能実習生のみで当該組合加盟求人者だけなのか、広くベトナムからの人材を受け入れて日本に紹介できる紹介事業者なのかも「取扱職種の範囲等」のその他欄に掲載されていますので、利用する価値があると思います。

 また、それぞれの事業者の過去の取扱い実績も、無期雇用(≒いわゆる正社員)、有期雇用の別で、前年度の取扱い実績就職者人数などもわかるようになっています。この情報公開は、先般の職業安定法改正により、2018(平成30)年1月以降法律で義務付けられた事項ですので、この欄にきちんとデータ公表をしていない事業者は、遵法姿勢に疑念を抱かれていても仕方ないでしょう。
 もっとも、求人・求職を申し込む際には、取扱いの量だけではなく、得意な取扱い分野や、丁寧な紹介を行っているかどうかも大事な要素ですので、リンクしているその事業者のHPも十分に閲覧してから、選択することをお勧めします。

 また、行政処分(職業紹介業務改善命令や職業紹介事業停止命令、許可取消命令その他)を受けた事業者の欄には、その内容が掲載されていますので、求人・求職をする際にはその内容を確認することも考えられます。少なくとも企業の採用担当の方々が、人材サービス会社からの営業を受けたときには、念のためそこが行政処分の対象に最近なっていないかどうかはチェックすべきでしょう。

 せっかく予算を投じて開設・維持しているサイトなのですが、小職の担当する人材紹介業界を利用される求人者の方々からの相談の際、この「人材サービス総合サイト」のお話をすると、案外ご存知ない方もいらっしゃいます。
 先般2017(平成29)年の職業安定法改正にあたっては、附則によって「政府は、この法律の施行後五年を目途として、この法律により改正された雇用保険法及び職業安定法の規定の施行の状況等を勘案し、当該規定に基づく規制の在り方について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。」とされていて、もうあと2年足らずで定められた時期が到来するのですから、その際には、処罰規制強化だけでなく、この情報公開の仕組みをより活性化するために、事業者に対して情報公開のメリットもなお一層周知するとともに、より一層使いやすい検索システムへの改善を図ったらよいのにと思っています。

(注:この記事は、岸健二個人の責任にて執筆したものであり、人材協を代表した意見でも、公式見解でもありません。)