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リモートワークの前にチームワークの醸成を

社会保険労務士 川越雄一

 

従業員が感染者や濃厚接触者となり、急に休ませなくてはならない場合もあります。そのために、リモートワークが奨励されていますが、困難な会社も多いと思います。ですから、そのような会社は、無理してリモートワークに取り組むより、労務の原点に立ち返ることが現実的です。つまり、出勤できる従業員でリカバリーできるよう、日頃からチームワークを醸成しておくことです。

 

1.いつ誰が感染してもおかしくない

急拡大した第5波は減少傾向にありますが、この先、いつ誰が感染してもおかしくありません。

感染者本人はもちろんですが、濃厚接触者となっても、急に長期の職場離脱を余儀なくされます。

  • たとえ気をつけていても

社会生活をしている以上、少なからず人との接触はあるわけですから、たとえ気をつけていても、どこで感染するか分かりません。仮に感染対策は取っていたとしても、それ自体が完璧ではありませんし、接触する人が全員、感染対策をしているとは限らないからです。それに、感染の仕組みが100%解明されているわけでもないので、感染のリスクは誰にでもあります。

  • いざ従業員が感染したら

仮に従業員が感染した場合、本人が出勤禁止になるのは当然ですが、場合によっては他の従業員も濃厚接触者と認定され自宅待機となります。仮に従業員の家族が感染者となった場合でも、今は直ぐに入院できないようですから、濃厚接触者から感染者になることも十分考えられます。

  • 急な職場離脱

もちろん、感染者というのは身体的にも精神的にも大変な負担だと思います。濃厚接触者にしても検査結果が出るまでは不安なはずです。また、従業員が感染しても濃厚接触者となっても、急に一定期間職場離脱を余儀なくされることになります。また、用心のために従業員を自宅待機させる場合もあるでしょう。何れにしても一定期間、従業員の一部が休むことになります。

 

2.「それではリモートワーク」と言われても

もちろん、リモート機器を使い自宅などで対応可能な業務もあるでしょう。しかし、多くの業務はそう簡単ではなく結局のところ、それぞれの現場において人が動く必要があります。

  • リモート機器は導入したとしても

2021年4月に発表された日本生産性本部のデータによるテレワーク実施率は平均で19.2%です。事務機屋さんにお願いすれば、リモートワークに必要な機器の提案をしてくれるでしょうし、国もそのような取り組みに補助金を出す制度があります。しかし、立派なリモート機器は導入したとしても、キチンとした仕組みがなければ職場は混乱するだけです。

  • 仕組みは急に作れない

仮に、リモートワークが可能とされる業務であれば、否応なしに対応しなくてはならないでしょう。しかし、その取り組みには多くの仕組みが必要です。従業員自宅のネット環境や発生するコスト負担、情報漏洩防止策、勤務時間の取り扱いなどです。リモート機器はすぐに導入できたとしても、仕組みは急に作れません。

そのようなことにモタモタしていたら業務は停止してしまいます。

  • 急場をしのげる体制が重要

職場内の感染対策が徹底されていれば、仮に従業員の一人が感染したとしても、その他全員が濃厚接触者と認定されることは少ないと思います。逆に言えば、濃厚接触者と認定されないような職場の感染対策をとっておくべきです。そうしておけば、誰か感染して急に職場離脱しても何とか急場をしのげます。そのためには……。

 

3.急場をしのぐ原点はチームワーク力

もちろん、リモートワークの有効性はあると思います。しかし、そうであっても、職場内のチームワークがあればのことです。

  • トップがメッセージを伝える

従業員が感染等により職場離脱した場合はトップがハッキリと方針を伝えます。

例えば「本人が一番辛いと思います。皆さんにも大きな負担を掛けますが何とかチームワークで乗り切りましょう。よろしくお願いします。」というようなメッセージです。

ないとは思いますが、ここで感染した従業員への非難は絶対にすべきではありません。

  • 日頃から助け合い精神の社風をつくる

リモートワークが馴染まない業務ほどチームワークが必要です。

仮に誰かが急に1カ月職場離脱した場合、他の従業員が自分の業務をこなしながらリカバリーすることになるからです。そのため、ときには残業、休日出勤も必要になるかもしれませんが、日頃から助け合い精神の社風があればこそ成り立つことです。

  • たまには仕事の担当替えをする

小さな職場は、仕事に人がつくのではなく、人に仕事がつきます。しかし、これでは急に1カ月も職場離脱されるとリカバリーがしにくいので、日頃からたまには仕事の一部でも良いから担当替えをしておきます。従業員も生身の人間ですから、コロナ以外でも急に職場離脱するかもしれないからです。

 

感染が急拡大した第5波も何とか収まろうとしていまが、この先何が起きるか分かりません。だからこそ、リモートワークの可能性を模索しながらも、労務の原点であるチームワークの醸成が重要なのです。