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労働あ・ら・かると

場数経験を重視するか、知識見聞を評価するかー 人材コンサルタントの選び方 ―

一般社団法人 日本人材紹介事業協会 相談室長 岸 健二

 この「労働あ・ら・かると」への寄稿の中で、何度か「人を雇ったことのない奴に良い職業紹介ができるのか」と言われた話を紹介いたしました。場数経験のない(少ない)人材コンサルタントのコンサルティングに不信感を持つ考え方、助言やアドバイスは、それを行う人間の実際の経験に裏打ちされることが必要という、いわば「場数経験重視型」の考え方でしょう。
 筆者は、この考え方に共感しつつも、一方で、過去の自分の(狭い)経験に頼りすぎ、最近の雇用情勢や働き方の多様化、脱メンバーシップ型雇用を模索する企業の採用・労務管理の発想や方針の変化についていけない、「昭和の臭いがプンプンとする上から目線助言」の気配も感じ取ってしまうことがあります。

 しっかりした大手人材紹介会社は、新卒採用した社員に対して、徹底した机上教育とOJTを実施し、場数経験の不足を補い、かつ最新の雇用動向や求人内容の変化を叩きこんで紹介業務に当たらせると聞きます。
 一方で、「企業系列系人材会社」の中には、例えば金融機関で人事の経験豊富な方が出向転籍して人材からの転職相談に応じていて、親会社に限らず金融機関に在籍している人材の現在の職種・業界についての理解と必要な情報提供も速く、また地方銀行系の人材紹介会社では、人事経験は少なくとも地域の優良企業や求人動向についての最新の情報を豊富に持ち、求人者への助言も的を射ているとの話も聞きます。

 コロナ禍が続く中、適切な問いかけではないかもしれませんが、読者の皆さんは、医者にかかる時「近所のかかりつけ医」で子供の時からの自分の健康や病歴をよく知っている医師を選びますか?それとも大きな大学病院で研修を終えたばかりの最新医学知識十分な若い医師を選ぶのでしょうか?
 更に極端な質問ですが、盲腸などの外科手術を受けることになった時、古くからある開腹式執刀での手術経験豊富な医師の手術を選ぶのか、最新式のロボット支援腹腔鏡術式を習いたての若い医師の施術を選択しますか?というシミュレーションを是非してみてください。
 最近は、求人・求職の取扱数の多い大手人材紹介会社と中小人材会社、地域に根を下ろした地方人材紹介会社と都市圏の人材紹介会社が、業務提携によって適切な転職紹介に成功する事例が増えているとの話も聞きます。
 「経験か知見か」という二者択一のように話をしましたが、「かかりつけ医の紹介状を持って、最新設備が整い操作のうまい若い医師の執刀を受ける。」といったシステムが、職業紹介の分野においてももっと活用されて、「場数経験を踏んだ助言」を参考にしつつ、「多くの求人求職情報のデータの中から自分の進路を選択できる」仕組みと円滑な運用が増えても良いと思います。

(注:この記事は、岸健二個人の責任にて執筆したものであり、人材協を代表した意見でも、公式見解でもありません。)