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就活生の褒めすぎは禁物!?

就職・採用アナリスト 斎藤 幸江

●加速する、26年卒の早期化
2026年4月入社の採用が始まっている。口コミ情報が豊富で、学生の利用も増えている就活支援サイトONE CAREERの調査では、9月以前に早期選考・早期本選考にエントリーし始める学生が31.8%、10月が30.9%。半数以上が10月以前に動き出している(株式会社ワンキャリア 2024年10月14日〜10月17日調べ 有効回答数418)。
夏のインターンシップや1 day 仕事体験への参加者に対するアプローチが、昨年以上に盛んで、もはや「本格始動」といってもいい状況だ。年明けの2〜4月開催が恒例だった「就活本番前のセミナー」を、年内に前倒す大学も多い。
はるか昔から、「新卒就活生の青田買い」は、毎年、話題になっていた。しかし、近年は、始動時期の学校間格差が縮んでいる。従来は、有名大学や人気学部の学生を早期に選考していたが、昨今は、レベルや専攻のいかんを問わず、開始時期が早い。

●広がる逆求人型
本稿、第10回でも取り上げたが、逆求人型(別名オファー型、スカウト型)と呼ばれる就活・採用支援サービスの利用が、さらに高まっている。来春卒のデータだが、リクルート系シンクタンク、就職みらい研究所の調査では、新卒採用企業で認知形成・広報の手段として「スカウト・逆求人型サービス」を利用したのは、30.9%で昨年の26.4%より増加している(「採用活動中間調査 2025年卒」 2024年4月22日~5月14日調べ N=2835)。
同社の学生調査でも、内定を取得した企業へのエントリー経路として「逆求人やスカウトなどダイレクトリクルーティングサービス」を挙げた学生は、24.1%に上った(「就職プロセス調査(2025年卒)」 2024年3月18日時点 N=298)。
相談などで接する26年卒に聞くと、25年卒業予定者よりさらに増えた印象で、ほとんどの学生が「すでに、逆求人型に登録済み」という。

●利用意欲には格差
しかしながら、逆求人型への期待や利用への意欲には、学生によって大きな差がある。
6月ごろから、早期選考対策としてインターンシップや1 day仕事体験への参加に意欲を見せ、積極的に取り組む学生が目立った。一方で、そうした同級生の姿に尻込みしたり、選択に慎重になりすぎて動けなくなったりという学生も、かなりいた。感触としては、「気になりながらも動けなかった」、「インターンシップ などに参加しそびれた」という学生は、26卒学生の2〜3割はいるのではないか。
彼らは夏休みを終えて出遅れ感に苛まれながらも一歩を踏み出せない。「それなら、企業側からのアプローチを待ってみよう」と受け身で、逆求人型に登録している。
最初から積極的に就活を進めていた学生は、「自分の中で軸や志望の方向性が固まってきたが、他にも可能性があるかもしれない」と、視野を広げるためにこうしたサービスを利用する。
実際にオファーを受け、担当者とやりとりをする中で、人材としての新たな魅力に気づいたり、採用側の心に響くエピソードを探り当てたりしている。
逆求人型は、プロフィールや自己紹介文などを開示し、採用担当者に読んでもらうことで出会いが始まる。
すなわち、「私を理解してほしい」、「どこが魅力なのかを探りたい」と積極的に発信するほど、採用側に強い印象を残し、よりよいオファーが舞い込む。しかし、前者のように「自分で動かなくても、企業側が見つけてくれるかもしれない」と受け身で、消極的なアピールをしても、オファーは来ない。
「やっぱり、大学名で切られたんですかねぇ」と失望する学生も少なくなく、「就活は、いくら頑張っても限界があるのかも」と余計、意欲を失っている。
実際は、書類の記述内容のレベル次第で、大学名を問わず、良い求人に出会える。しかし、成功体験がないと、なかなか信じてもらえず、そこが、就活サポーターとして、とても歯痒い点だ。

●高まる「優遇」への期待
逆求人型の老舗企業のひとつ、キミスカでは、「企業の本気度が分かる」仕組みを取り入れており、ゴールド、シルバー、ノーマルの3種類を設定している。「ゴールドスカウトはなんと全体の4%しかない希少なスカウト」(いずれも同社HP https://kimisuka.com/)で、これが来ると、学生のテンションも急上昇する。
しかし、最近は、加熱する人材獲得競争の中で、「夏のインターン参加者の中から選ばれた方にだけ」とか「早期選考の中でも特別ルートで」など、企業からの甘い言葉が学生に振りまかれており、学生もこうした高評価に慣れがちだ。
「ゴールドスカウトです!と言っている割には、対応がいまいちなんですよ。そろそろ、内定を出してもおかしくないと思うんだけどなぁ」
「ぜひともウチへ入社を、と考えているなら、面接回数をあと1回くらい減らしてくれないかなぁ」
そんな声が、2026卒から聞かれている。
採用を焦って「優遇」や「高評価」を乱発しすぎると、就活生になめられそうだ。定着する人材の確保には、むしろ冷静に、シビアな内容も含めて手厚いフィードバックで向き合うのが良策である。