インフォメーション

労働あ・ら・かると

Withコロナニューノーマル いろはかるた2025

一般社団法人 日本人材紹介事業協会 相談室長 岸 健二

 新年明けましておめでとうございます。
未曽有の新型コロナ感染症禍がやっと鎮静化し,喉元を過ぎている印象もあるお正月ですが、読者の皆様におかれましてはどのようにお過ごしでしょうか?
 記憶を風化させず持続することが大切だと思い、毎年毎年同じこと繰り返して恐縮ですが、新年のご挨拶に付言して申し上げます。
 被災後14度目の正月に、未だ故郷に帰還できない大震災・原発事故被災者の方々、福島にて被曝の危険の中黙々と廃炉作業等に従事している方々、能登をはじめ日本各地での災害に遭われた方々、ウクライナ、ガザ、ミャンマー、挙げれば悲しいことにキリのない世界中の戦乱や困窮の中にある人びとと、熱い心で被災者支援活動をされている方々、そして何よりこの社会を維持しているエッセンシャルワーカーの方々に思いを寄せながら迎える、筆者の新年です。
 昨年からの「Withコロナニューノーマル いろはかるた」の続きをお届けします。

な なんといっても「うがい手洗いマスク」が基本です
 「中国武漢で未知の感染症が発生したらしい。」との報道から5年余が経過し、コロナウィルス(COVID-19)に「新型」と付けることにためらうようになりましたが、インフルエンザやらマイコプラズマ肺炎やらの感染症の報道が続いています。電車の中でのマスク着用率も下がってきたように見えますが、油断はせずに「感染症対策の基本」を忘れずに。

ら 楽隠居楽に苦しむ毎日が日曜日
 高齢者雇用の促進が叫ばれていますが、はやばやと引退の道を選択した方に送る言葉です。城山三郎氏の「毎日が日曜日」の新聞連載が始まってから50年、作中では閑職のことで使われた場面もあったように記憶していますが、令和になっても増刷されているそうです。「楽は苦の種」とも言われます。楽が苦と感じるようになったら今まで培った知見を活かして雇用でもボランティアでも社会参加を試みてはいかがでしょうか。

む 昔取った杵柄を活かして生きる好例者
 前項に続いて高齢者に送る言葉です。マッチの火のつけ方がわからない(見たこともない)子供に、キャンプの引率ボランティアで面目躍如の人。エッジング絵画を趣味にして昔のガリ版切りを思い出す人。単なる懐古趣味ではなく、昔からの知恵の伝承話も素晴らしい存在です。年は取っても、胸を躍らせる日々を過ごされますように。

う 上から目線は鳥観図、下から目線は虫観図
 「Withコロナニューノーマル」と謳っている一方で、あれよあれよという間に世界中が「戦争の時代」になってしまいました。
戦争の報道を見聞きするとき、爆撃する側の飛行機やドローンから見た映像だけでなく、地面を這って逃げている人びとの視線を持ちたいものです。
 世相を語る時に、成功者勝ち組の話だけでなく、脚光を浴びずとも黙々とコツコツと仕事をしている人びとのことに目配りする観点も忘れずにと自戒する日々です。

ゐ 言い得て妙な「スキマバイト」
 「一億総スマホ時代」を背景としたスポットワークが注目を集めています。在宅ワークによって節減できた通勤時間、創意工夫で生産性を上げてできた余裕時間の「スキマ」を活かす働き方を実現したスポットワークは、昭和の時代の日雇い労働とも、日比谷公園にテントが林立した年越し派遣村の日雇い派遣とも一線を画した、新しい働き方・働かせ方を実現する可能性を秘めています。

の 軒を貸して母屋を取られる 灯台下暗しの身近な後継人材
 悪質なM&A事例があるそうです。後継者の探す中小企業に買収案件を持ちかけ、資産を吸い上げて放り出すといった悪質な企業買収が相次ぎ、注意を呼びかけられていると聞きます。事業の存続を望む経営者の隙を狙われることのないよう、「自称M&Aコンサルタント」ではない、信頼できる銀行証券会社を利用することも一つの手段です。
 事業継続はM&A以外の手法もあり、信頼できる生え抜き人材や外部人材の採用によることもあり得ます。

お 老いたる馬は路を忘れず 賢い馬は過去にこだわらず
 経験を積んだ者は、行うべき道を誤らないことのたとえと言われますが、大きな環境変化の中では、過去の経験にこだわり過ぎて道を間違うこともあり得ます。
 「正しく老いたる馬」は、新しい環境に適応できる発想と、歴史ある倫理観を双方保持して歩まなければなりません。

く 君子危うきに近寄らず、闇バイト求人に関わらず
 闇バイトのまん延は「一億総スマホ時代」が生んでしまった負の側面です。「悪は人の心の隙間を狙う」とも言います。怪しげなSNSに誘導されそうなときの警戒心、常識を超えた好条件の求人をおかしいと思うことを忘れず、信頼できる職業紹介や求人媒体を使いましょう。

や 焼き餅焼くとて手を焼くな 嫉妬しないで観察を
 元来は嫉妬心が過ぎるとやけどするぞとの警句でした。若くて企業上場を果たした経営者に嫉妬するのではなく、冷静にその人脈や情報網、資金調達法を観察して、自分なりに消化することが大切です。またいくつかの失敗を経験したからこそ、その教訓化を経て立派になった経営者もいらっしゃいます。見えるのは格好いいことばかりであることが多いのです。冷静に影の部分も観察し、失敗や艱難をどう乗り越えたかもよく見ましょう。

ま 間尺に合わない仕事でも、好きで食えれば幸せな
 以前よく通った小さなお店の店主がよく口にしていた言葉です。ビジネスパーソンの懐具合を見透かしたように、「安くて美味しい」を地で行ったようなお店でした。何十年も続けられたのは、「自分の健康とお客さんが続いたおかげだ」ともよくつぶやいていました。コロナ禍と自分の高齢化を機にお店を閉めたことが残念ですが、最近息子さんがお店を開いたので、手伝いを始めたと聞きました。「円安で輸入食材が高騰して」という愚痴を聞きながらでも、また通い始めようと思っています。

け 謦咳に接する 同時に見分ける
 咳ばらいをしながら話す老人の姿が目に浮かぶ文字ですが、成功した高齢経営者の話にもヒントを得ることができます。
 というよりも、ヒントを話してくれる先輩と自慢話ばかりする先輩を見分ける眼も大切です。環境がどんなに変化しても貫くべき倫理観を汲み取れるか、単なる昔話として受け止めてしまうかは、案外話し手の問題ではなく聞き手のセンスに起因している場合もあります。

ふ 富貴にして善をなし易く貧賤にして功をなし難し
 豊かであれば、生活に余裕があれば、善いことができるが、貧しいと何かを成し遂げることもむずかしいとの、何とも世知辛い句ではありますが、金銭のことだけでなく心のありようについての富貴貧賤も説いているようにも思います。

こ 「巧言令色鮮し仁」は面接官の心の声
 もともとは論語だったと思いますが、言葉巧みで、表情をつくろって気に入られようとする者には、仁の心が欠けているという句でした。熟練した採用面接担当者は、マニュアルで覚えた面接テクニックに辟易としているわけです。本音を自分の言葉で語る人材とそれに好感を持つ採用担当者が人材豊富な企業を築くのではないでしょうか。

へ 下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる
 元来は、能力不足でも数多く試みれば、まぐれ当たりで成功することもあるという意味ですが、就職活動でもビジネスパーソンとしての営業活動でも、一度に多量の情報を収集したり発信したりできる時代では、もう一度その意味を考えたいものです。
 人生二通りは試せないことがほとんどですから、情報の氾濫に惑わされることなく、自分の好きなこと、自分のやりがいを感じる感性を大事に、職業を選択していただきたいものです。

(注:この記事は、岸健二個人の責任にて執筆したものであり、人材協を代表した意見でも、公式見解でもありません。)