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労働あ・ら・かると

ビジネスコミュニケーションって、何?

就職・採用アナリスト 斎藤 幸江

●就活用語がわからない
年が明け、今まで動きがなかった企業も早期選考に乗り出した。
すでに11月頃に選考が始まっていた就活生は、慣れた感じで動いているが、これからという学生は戸惑いも多い。
改めて、彼らの相談に接して、「そういえば、早期の就職活動は、学生にとっては謎だらけだなぁ」と実感した。

●一体、何が始まっているの?
丹念に彼らの疑問に向き合ってみた。
「そもそも、早期選考ってなんですか?」
どういう意味かと聞くと、本選考との関わりがわからないという。
「インターンシップや説明会に参加した学生にのみ、早期選考を始めさせていただきますと言われましたけど、どういう意味ですか? 早めに会っておいて、3月1日以降の本選考で、事前の情報が加味されて、有利に進むということでしょうか?」
いや、2月中に内内定や内定が出たり、3月1日以降に最終面接を一回やって、終わりなどのケースもあると伝えると、さらに戸惑った様子。それは、業界ごとに慣習みたいなものがあるのか、それとも各企業の判断なのかと聞いてきた。
業界独自というより、専攻による違いの方が大きい。たとえば、建設・建築系の技術職採用は毎年早く、大手は1月には内定が出るし、薬学・化学系も1、2月の内定は多いと話した。
「自分に連絡してきた企業のこの先の予定は、どうすればわかるんですか? ネットでいくら調べてもよくわからないです」
ほかにも「面接ではなく、面談を行う」、「採用選考ではなく、ジョブマッチングという視点で話したい」など、謎すぎる言葉だらけだそうだ。さらに「リクルーター」の存在や役割、見分け方もわからなくて困るという。
「今、何が始まっていて、自分の立ち位置がどういう状況なのか、見えなくて不安です」

●これがビジネス社会なんですかね?
今、行われていることは、すべて採用選考の一環ととらえておけばいいこと、リクルーターは、最近は、自ら名乗ってくれる場合がほとんどであること、その役割は、各社によって異なること(学生への情報提供・相談メインで選考に関係なし、会った報告は参考情報として扱う、ある程度の評価を委ねるなど)、一番の情報源は社員に直接聞くことだと、アドバイスした。
OB・OG訪問に関しては、近年は、ビズリーチキャンパスを使う学生が多い(参考:https://br-campus.jp/)。しかし、大学や志望先の業種によっては、卒業生を見つけにくい。
そういう時は、就活生と若手社員をつなぐ、Matcher(https://matcher.jp/)を利用できると伝えた。
「明確な定義がない、言葉の裏を読まなくてはいけない、口コミ情報に真実がある……。そういう世界に慣れていないんです。でも、ビジネスの世界では、こういうことが、常識なんでしょうか?
なんだか、就職後も不安になってきました」

●新卒採用姿勢は今なお、旧態依然
改めて新卒採用のスタイルを眺めてみると、大手企業を中心に数十年前からの姿勢を変えないところが多い。
形骸化しているルールやアウトラインを横目に、他社状況や学生の意識を見据えてスケジュールを組んで進んでいく。
「今回のイベントは、今日の学内説明会参加者のみにお伝えする特別なものになります」「OB訪問してくれたから話すけど、実は私はリクルーター。今度、別の社員に会ってもらいます」といった重要な情報は、対面で伝えられていく。
今は、学生同士で就職活動を話題にすることがほとんどなく、こうした情報は口コミネットワークに乗りにくい。
現在の学生の特性に合わせて採用をしていかないと、良い学生に「そんな方法は、時代遅れで先見性が見えない」と見切られるかもしれない。