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「『働き方改革実行計画』を読み解く」セミナー開催~東基連~
公益社団法人東京労働基準協会連合会(東基連)は10月24日、都内で水町勇一郎氏(東京大学社会科学研究所教授/働き方改革実現会議メンバー)を講師に招き、一連の働き方改革の動向やこれへの企業の対応をテーマとしたセミナーを開催した。
今年3月に策定された政府の「働き方改革実行計画」に基づき、現在関連法案の国会提出が予定されているが、企業実務に大きな影響を与えることから関心が高まっている。この日会場には、企業の経営者、人事担当者、社労士など400名余りの参加者が詰めかけた。
セミナーでは、働き方改革の二大柱である長時間労働の削減と非正規労働者の待遇改善を中心に、時間外労働の上限規制等を盛り込む労働基準法、同一労働同一賃金の実現を目的とするパートタイム労働法、労働契約法、労働者派遣法の改正法案の要点や今後の見通し、企業にとって実務上必要となる対応策について解説された。
水町 勇一郎 氏
関連法案は、当初今秋の臨時国会への提出を目指して準備が進められてきたが、9月の衆議院解散により提出が見送られた。次期通常国会以降の提出となると、現在の法案で2019年4月とされる施行期日の延長・修正も考えられるが、現時点でははっきりしていない。企業にとっては社内制度や運用の見直しを迫られる事項も少なくないことから、いずれの場合でも対応できるよう準備しておくことが重要だと述べられた。
時間外労働の上限規制は、改正法案によれば、原則的な上限として月45時間、かつ、年間360時間とされ、臨時的な特別の事情がある場合には特例が認められるが、その場合でも時間外労働は年間720時間を上回ることができない。さらにこの上限については、①2か月、3か月、4か月、5か月、6か月の平均で、いずれにおいても、休日労働を含んで80時間以内を満たすこと、②単月では、休日労働を含んで100時間未満を満たすこと、③特例の適用は、年半分を上回らないよう、年6回を上限とすること――が要件とされる。
この改正の趣旨は、厚生労働大臣告示である現行の限度基準の内容を法律に格上げし、違反に対して罰則を科すものであるし、あくまでも月45時間、年間360時間が上限規制の原則であるから、各企業では、時間外労働を原則の範囲内におさめる体制作りが必要となる。また、現行の限度基準を基礎とする上限時間には休日労働を含まないが、特例が認められる場合の①や②の要件は、過重労働による健康障害のリスクを図る労働時間の目安(いわゆる過労死基準)によっており、休日労働も含まれ「時間外労働時間」の捉え方に違いがある。そうなると、実務上、時間外労働の把握・管理が複雑になるといった問題もある。
一方、同一労働同一賃金に関しては、現在「ガイドライン案」として、基本給、賞与、諸手当、福利厚生について、正社員との差異が合理的な場合・不合理な場合が具体的に例示されている。改正法案に盛り込まれる均等・均衡待遇のルールは、企業内で就業規則や運用を見直す際には、個々の待遇それぞれについて、その待遇差が性質や目的に照らして合理性を説明できるかどうかがポイントとなると指摘。さらに、来年4月に有期契約労働者の無期転換が現実化することと併せ考えると、有期・パート労働者の待遇改善とともに、無期転換者の待遇改善についても対応の必要が出てくるといった問題にも触れられた。